【連載記事 事例 サウスウエスト航空】 航空業界の異端児#02 サウスウエスト航空のビジネスモデル

サウスウエスト航空のビジネスモデル研究 サウスウエスト航空

前回、サウスウエスト航空は変化の激しい航空業界の中で40年以上黒字を出し続け、高い利益率を誇っていると説明しました。このような結果を残し続けることが出来るサウスウエスト航空のビジネスモデルはどのようになっているのでしょうか?

今回のテーマはサウスウエスト航空の基本的なビジネスモデルについてです。

サウスウエスト航空のビジネスモデル

サウスウエスト航空のビジネスモデルの特徴は「低価格」「直行便」「B737」の3つのキーワードで表すことが出来ます。「低価格で直行便をB737という飛行機を使って運航する」これがサウスウエスト航空の基本的なビジネスモデルです。

内山:「意外とシンプルですね」

では、具体的にどういうことか説明していきます。

低価格

サウスウエスト航空は低価格であることを売りにしています。

内山:「どれくらい安いんでしょう?」

路線やシーズンによって違いはあるでしょうけど、大体他社の2割~3割は安いと言われています。

岡崎:「2割~3割引きだったら魅力的だな」

内山:「そうですね。だけど、運賃を安く設定出来るってことはそれだけ運航コストが掛からないオペレーションをしているってことですよね?どんなことをやっているんだろう?」

その当りの秘密は後々説明していきますので、楽しみにしておいて下さい。

直行便

直行便を運航していることもサウスウエスト航空の特徴の一つです。専門用語で言うと、「ポイント・トゥ・ポイント方式」で飛行機を運航しているということです。

内山:「それって特別なことなんですか??直行便なんて当たり前のことのような気がするんですけど…」

岡崎:「それがそうでもないんだな…。特にサウスウエスト航空みたいに低コストでの運航を行う場合にはポイント・トゥ・ポイントというのは相性が悪い」

内山:「え?そうなんですか??何で???」

それを理解してもらうためには、ポイント・トゥ・ポイントの反対のハブ・アンド・スポークという運航方式を理解してもらう必要があります。
簡単に言ってしまうと、ポイント・トゥ・ポイントが空港と空港を直接結ぶのに対して、ハブ・アンド・スポークでは一旦「ハブ空港」と呼ばれる大きな空港を経由して飛ぶ方式のことです。

内山:「うーん。分かったような分からないような…」

岡崎:「具体的に例を上げると、例えば北海道の釧路空港から九州の鹿児島空港まで飛ぶときに、直接釧路から鹿児島まで行くのが『ポイント・トゥ・ポイント』これは分かるよな?」

内山:「はい」

岡崎:「それに対して『ハブ・アンド・スポーク』では、釧路からの利用客は小型機で一旦北海道のハブ空港である新千歳に飛ぶ。そこで大型の期待に乗り換えて、北海道の他の空港から来た人たちと一緒に福岡空港に行く。で、福岡で鹿児島行きの便にまた乗り換えて鹿児島に行くってことになる。整理すると、釧路(小型機ローカル便)→新千歳(大型機幹線便)→福岡(小型機ローカル便)→鹿児島こんな流れだな」

岡崎さんの説明は分かり易く説明するための例えなので、実際にこんな面倒な便で釧路から鹿児島に行くことは無いと思いますが、イメージとしてはこのようにハブ空港(この場合は千歳と福岡)を噛ませて運航する方式がハブ・アンド・スポークです。

内山:「いちいちハブ空港で乗り換えをするなんて面倒ですね。何でこんなことをするんですか?」

ハブ・アンド・スポークの方が効率が良いからです。ハブ・アンド・スポークではハブ空港間の運航には大型機を使って同一方面に向かう乗客をまとめて運ぶので規模の経済性が働いて乗客一人当たりのコストが下がります。だから、サウスウエスト航空が設立された当初はハブ・アンド・スポーク方式が多くの航空会社で採用されていました。
ちなみにハブ・アンド・スポーク方式は物流業界では広く採用されています。例えば、宅配便や郵便物の輸送はこの方式で行われているので、興味があれば調べてみて下さい。

内山:「おー!じゃあ、今度宅配便屋さんや郵便屋さんが来たら『ハブ・アンド・スポークですね!』って言ってやろ」

岡崎:「多分、『何こいつ?』って思われるから止めておいた方がいいぞ…」

なぜ、サウスウエスト航空はハブ・アンド・スポーク方式を採用しなかったのか?

内山:「だけど、どうしてサウスウエストはハブ・アンド・スポーク方式を採用しなかったんですか?ハブ・アンド・スポーク方式の方が効率が良いんですよね??」

それは、ハブ・アンド・スポークに問題があるからです。1つは「利便性の問題」。2つ目は「飛行機の稼働率の問題」です。
まず利便性の問題から説明をしていきますが、先ほど内山さんが言っていたようにハブ・アンド・スポークはハブ空港での乗り換えを伴うので、利用客からしたら面倒です。

岡崎:「確かに俺も前に海外に行ったときに経由便で行ったんだけど、乗り換えが面倒だったし、乗り継ぎで何時間も待たされて苦痛だったから出来れば直行便で行きたかったな」

大抵の飛行機の乗客は岡崎さんのように思っているはずです。乗客の利便性を考えるのであればポイント・トゥ・ポイントで直行便を運航させた方が良い。もし直行便が無いルートに直行便が運航されればそれだけで乗客は集まります。サウスウエスト航空はそこに目を付けました。

内山:「なるほど…。じゃあ、2つ目の稼働率の問題というのは?」

ハブ・アンド・スポーク方式ではハブ空港でハブ空港間を運航する期待が乗り継ぎ待ちをするために待機をします。例えば、先ほどの例で言えば、新千歳→福岡便が13:00に出発できる準備が整ったとしても、釧路便が15:00着だったら2時間は乗り継ぎ待ちで待機しなければなりません。その間機体は遊んでいる状態になるので、稼働率は低くなります。機体の回転率が低くなると言ってもいいですね。そうすると、1回当りの運航コストが高くなります。

岡崎:「仮に飛行機の固定費が年間1,000万円掛かるとして、年間200便飛べば1便当たりの運行コストは1,000万円÷200回=50万円だけど、100回しか飛べないなら1,000万円÷100回=100万円になるってことだな」

内山:「なるほど、稼働率が低くなる分コストが上がるってことですね」

そこでサウスウエストはこの2つの問題を解消するために、ポイント・トゥ・ポイントでの運航を行うことにしました。

内山:「だけど、それだと乗客一人当りのコストを低く抑えられるというハブ・アンド・スポークのメリットを捨てることになりますよね?他社がハブ・アンド・スポークを採用しているのはそれを捨てることのデメリットが直行便を運航させるメリットより大きいからですよね??」

その通りです。だから、通常であれば「やっぱりハブ・アンド・スポークを採用しておこう」となるのですが、サウスウエスト航空はある解決策を見つけました。それが、サウスウエスト航空のビジネスモデルの3つ目のキーワードとなる「B737」です。

B737

B737とはボーイング社が製造している座席数100席~150席程度の小型の飛行機です。ローカル路線ではよく採用されているので、乗ったことがある方もあるかもしれません。サウスウエスト航空はハブ・アンド・スポーク方式を捨てることで発生する問題をこの機体を使うことで解消しました。

内山:「B737を使うと何で問題が解消するんですか?」

B737というのは小型の機体なのでコストを安く抑えることが出来ます。燃費効率が良いので燃料費が安く済みますし、機体そのものの価格も安いので購入費も安いです。乗客数が少なくても1運航当りに掛かる固定費も少なく抑えることが出来れば、乗客1人当りのコストは抑えられますよね?

内山:「まあ、そうなりますね」

岡崎:「そして、サウスウエスト航空はこのB737のみを使うことにした」

内山:「ん?どういうことですか??」

他の機種は使わないってことです。通常航空会社というのは「乗客数の多い路線には大型機」「ローカル路線には小型機」といった具合に路線の特徴に合わせて複数の機種を運用するのですが、サウスウエスト航空はそうではなくB737のみを運用することにしました。

内山:「ということはサウスウエスト航空はB737しか持っていないと?」

岡崎:「そういうこと」

サウスウエスト航空が1種類の機種しか運用していない理由

内山:「何でですか?多くの乗客数が見込める路線もあるだろうから、少しは大型機を持っていても良さそうなものですけど…」

実は運航する機種を1種類に絞ることには大きなメリットがあるんです。まず、機種が1種類であればメンテナンス用の部品をその機種用のものだけ準備すれば良い。逆に複数の機種を持っていると、その分だけ余計な部品を持っておかなければならなくなってしまいます。すると、当然ほとんど使わない部品なども購入しなければならなくなって、余計なコストが掛かります。

岡崎:「部品の点数が少なければそれだけ購入コストが少なくて済むし、保管コストも少なくて済むってことだな」

また、機種が多くなるとその分だけパイロットや整備士に教育を受けさせなくてはなりません。ですが、機種がB737だけであればB737の操縦や整備についての教育だけを受ければいいことになります。その分教育に掛かるコストも減ります。

岡崎:「他にも、機体をやりくりするための管理の手間も無くなるな」

そうですね。何機種も運用していると、「この路線にはこの機種のこの機体を配置して…。こちらの路線にはこの機種を配置して…」という具合で、機種と機体数の組み合わせを考えて機体をやりくりしなければならないですが、B737のみを運用しているなら機体数のことだけを考えれば良いので管理が楽です。

このようにサウスウエスト航空は運用する機種をB737の1種類のみに絞ることでメンテナンスや教育、管理に関するコストを少なくしたわけです。

内山:「だけど、一つ気になることがあるんですけど…」

岡崎:「何?」

内山:「もし、ある路線で乗客数が増えたらどうするんですか?大型機を持っていないから機種を変えて対応するってことは出来ないですよね?」

岡崎:「大型機が無いなら、便数を増やせばいいじゃない」

内山:「それは分かりますけど、そうしたら機体を多く持たないといけなくなりますよね。さっきB737は小型機だから安いって話が出ましたけど、B737を何機も持つより大型機を1機持った方が安く済むんじゃないんですか?」

岡崎:「だったら、機体を何機も持たなければいいじゃない。1つの機体を何回も使えばいいじゃない」

内山:「さっきからなぜマリーアントワネット?まあ、それは良いとして、岡崎さんが言っていることは分かりますけど、そんなこと出来るんですか?実際にそれが出来ないから普通の航空会社はロスが出ることを分かっていて複数の機種を持っているんじゃないですか?」

岡崎:「そうだよ。普通の会社なら出来ないな。だけど、サウスウエスト航空は普通の会社じゃないからな」

内山:「ということは、サウスウエスト航空は岡崎さんが言っていることをやってのけたと?」

そうです。サウスウエスト航空は常識では考えられない機体の運用を行って、岡崎さんが言っていることを実現してしまいました。何を行ったのかはまた次回…。