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エージェンシー問題 ~経営者と管理職、上司と部下の利害・関心は違う~

けいなび研修
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皆さんは日々仕事をする中で、「人が思ったように動いてくれない」という問題に直面したことはありませんか?このような問題は誰しもが一度は経験したことがある問題だと思います。

では、なぜこのような問題が発生するのでしょうか?それを説明する理論に「エージェンシー問題(理論)」というものがあります。今回は、このエージェンシー問題について説明していきたいと思います。

プリンシパルとエージェント

エージェンシー問題では人間関係をプリンシパルとエージェントの2つに分けて考えます。

プリンシパルとは仕事や行為を「依頼する側」のことで、エージェントは「仕事を頼まれる側」のことです。例えば、上司と部下の関係であれば上司がプリンシパルで部下がエージェントです。

そして、ここからが重要ですが、このプリンシパルとエージェントの間には「2つの不一致」があり、その不一致が原因ですれ違いや問題が発生するとエージェンシー問題では考えます。

プリンシパルとエージェントの間に存在する2つの不一致

では、2つの不一致とは何でしょうか?1つは「目的の不一致」もう一つは「情報の不一致(情報の非対称性)」です。

目的の不一致

目的の不一致というのは、簡単に説明すると「お互いの利害や関心が違う」ということです。

例えば、Aさんが「給料を増やすため」Bさんは「出世のため」に仕事をしているとすると、この2人の間には目的の不一致が存在していることになります。

情報の非対称性

情報の非対称性とは、「プリンシパルがエージェントの行動を把握出来ない」ということです。

例えば、プリンシパルである上司のCさんと、エージェントである外回り営業のDさんがいたとします。このとき、CさんはDさんの行動を逐一把握出来ているわけではありません。もしかしたら、DさんはCさんが分からないところで仕事をさぼっているかもしれないし、手を抜いているかもしれません。


エージェンシー問題の例

では、ここからは少しエージェンシー問題の具体例を挙げていきたいと思います。もしかしたら皆さんも心当りがあることもあるかもしれません。

経営者と管理職

まずは経営者と管理職(営業部長)の例です。この場合、プリンシパルは経営者。エージェントは営業部長です。

経営者は少しでも会社の利益を伸ばしたいと考えているので、営業部長に対して「既に今期の目標は達成しているが、もっと顧客開拓をして売上高を伸ばして欲しい」と言います。しかし、営業部長は「そんなことをしたら来期の売上目標の達成が大変になる」と考えてこっそり今期に付けられる売上を来期に回すかもしれません。

では、なぜこのようなことが起きるのかというと、経営者の目的は「今期の利益を伸ばすこと」にありますが、営業部長の目的は「毎年の売上目標をそつなく達成する」というところにあり、両者の目的が一致していないからです。

また、もし経営者が営業部長の行動を十分に把握することが出来れば、今期の売上を来期に回そうとする営業部長に対して「その売上は今期に回しなさい」と指示をして自分が望む結果を得ることが出来ますが、経営者は営業部長の行動を逐一把握出来るわけではないので、それも難しいです。

これが経営者と管理職間で起きるエージェンシー問題です。

上司と部下

上司と部下の関係でもエージェンシー問題は起こり得ます。さきほどの営業部長に今度はプリンシパルとして登場してもらって説明をしましょう。

プリンシパルの営業部長は部下である営業担当に「1件でも多くお客さんのところに行って契約を取ってこい」と指示したとします。しかし、部下はそこまで一生懸命仕事をしても疲れるだけなので、部長にバレないように仕事をさぼります。これが上司と部下の間で起こるエージェンシー問題です。

ちなみにこれも上司と部下の間で利害や関心を一致させ、情報の非対称性を解消すれば解決しますが、実際はそんなことはなかなか難しいですよね…。そこがエージェンシー問題の悩ましいところです。

エージェンシー問題をどうやって解決するか?

エージェンシー問題がどのようなものか理解して頂いたところで、エージェンシー問題の解決策の話に移ります。

最初に結論を言ってしまいますが、エージェンシー問題の解決は非常に難しいです。「こうすればエージェンシー問題は解決します」という万能策はありません。それもそうですよね。もし万能の解決策があれば世の中から上の事例で示したような問題は無くなっているはずですから…。とはいうものの、ここで話を止めてしまってはつまらないので、少しエージェンシー問題の解決策とその問題点について書いておきたいと思います。

モニタリングによる解決とその問題点

エージェーンシー問題の解決策として「モニタリング」による解決というものがあります。これはプリンシパルがエージェントの行動をモニタリングすることで、情報の非対称性を解消しようという試みです。

具体例としては、上司が部下に報連相を徹底させたり、報告書を提出させたり、ミーティングを行ったりするなどがあります。多かれ少なかれどこの組織でもやっていることではないでしょうか?

このようにプリンシパルとエージェントの間で情報共有を図り、モニタリングを行うことは情報の非対称性の解消に一定の効果はありますが、やりすぎは注意です。

というのも、過剰なモニタリングはプリンシパルの立場からすれば、エージェントの行動を逐一把握出来るようになるので、安心感は得られますが、エージェントの立場からすれば、プリンシパルから常に監視されている気分になるので、たまったものではありません。人によってはそれによって過剰なストレスを感じたり、「自分は信用されていないのか?」と不信感を抱いたりして、モチベーションの低下や人間不信を招きます。

インセンティブによる解決とその問題点

また、目的の不一致に対しては「インセンティブ」による解決という方法があります。これは所謂「飴と鞭」の「飴」による解決です。

例えば、経営者と管理者間の目的の不一致を解消するために、管理者の給与を成果連動にするなどの方法があげられます。

インセンティブによる解決はモニタリングよりも問題点が無さそうに感じられますが、残念ながら問題点はあります。そもそも、「何がインセンティブとして適切か分からない」という問題です。

インセンティブによる解決を図るというと、「じゃあ、給与・報酬を出せばいいんでしょ?」と考えがちですが、人によってはお金に魅力を感じない人もいます。「今の給与で満足」という人に対して「給与をアップしますよ」と言っても、「いや、給与はいらないから仕事を楽にしてよ」と言われるかもしれません。そのようにお金に魅力を感じていない人に対して、お金をインセンティブとしても意味がありません。人の価値感というのは多様です。仕事に「お金」を求める人もいれば、「楽さ」を求める人もいますし、「権限」や「やりがい」「人間関係」を求める人もいます。そのように多種多様な価値観がある中で、その人に合った適切なインセンティブを提示するというのは大変です。だから、インセンティブでの解決というのもなかなか難しいのです。

以上が、エージェンシー問題についての解説でした。エージェンシー問題の解決は一筋縄ではいきませんが、組織にはこのような問題が発生するんだということをしっかりと認識して、その解決策を自分たちなりに探っていくことが大切なのかなと思います。