【連載記事 事例 サウスウエスト航空】 航空業界の異端児#04 常識外れのコスト削減策

サウスウエスト航空のビジネスモデル研究 サウスウエスト航空

前回は10分間ターンについて書きましたが、サウスウエスト航空はその外にもそれまでの航空業界の常識では考えられなかった方法でコスト削減を行っています。

コスト削減のためにチケットを廃止

今では見る機会も少なくなりましたが、一昔前までは飛行機に乗るためには紙のチケットが必要でした。

岡崎:「今はeチケットを使うことが多くなってるけど、少し前までは厚めの紙で出来たチケット持って飛行機に乗ってたよな」

内山:「あれを持って空港に行くとなんだかワクワクするんですよね」

「これから飛行機に乗るぞ!」というワクワク感を生み出してくれるあのチケットですが、サウスウエスト航空は発行してくれませんでした。

内山:「え?何で??」

チケットを発行するコストを削減するためです。80年代にサウスウエスト航空がチケットを発行するためのシステムを導入しようと検討をしたことがあったのですが、その時の投資額が数百万ドルも必要だったため、思い切ってチケットを廃止してしまうことにしたようです。

内山:「チケットの発行システムってそんなに掛かるんですか?」

岡崎:「専用端末が必要になったりするから高額になるんだろ。それに紙も専用の物が必要だったりするだろうからトータルで考えたらチケットの発行って結構コストが掛かると思う」

内山:「だけど、チケットが無かったらお客さんは困りますよね?どうしたんですか??」

レシートを渡しました。

内山:「え?レシート??」

そう。レシートです。チケットを買ったときに発行されるレシートを「これがチケットです」と言ってお客さんに渡しました。ただ、チケットだと思わずに間違えて捨ててしまう人もいたようで…。

岡崎:「まあ、そうなるだろうな…」

内山:「その問題はどうやって解決したんですか?」

レシートに大きく「これはチケットです!」と書くことにしました。

内山:「そんな方法で解決を…」

これがサウスウエスト航空です。「チケット?そんなの紙に何か書いてあればいいだろ!だったら、レシートでOK!!」「レシートを捨てた?だったら、レシートに”チケットです!!”と書いておけ!!」こういう単純な発想で仕事をしてしまうのがサウスウエスト航空です。

搭乗券も廃止

内山:「レシートをチケット代わりにするのは分かりましたけど、搭乗券はどうするんですか?飛行機に乗るとチェックイン後にチケットの半券を搭乗券としてくれますよね??それもレシートで代用ですか???」

搭乗券はプラスチック製のカードを使うことにしました。チェックインをすると番号が書かれたプラスチックのカードが「はい。これ搭乗券」と渡されるので、それを搭乗券として使います。

内山:「プラスチックのカード?チケットにはお金掛けないのにそこはお金掛けるんですか?」

岡崎:「そのプラスチックのカードは使い回すけどな」

内山:「使い回す???」

飛行機に乗るときにゲートのところでカードを回収して、それをまたチケットカウンターに持って行って次の便の乗客にまた「はい。これ搭乗券」って渡す訳です。

岡崎:「プラスチックのカードなら何回も使えるから搭乗券の材料費が節約出来てお得」

内山:「いやいや、『節約出来てお得』じゃないですよ。搭乗券には座席番号とか書いてあるじゃないですか。それを回収してしまったら乗客は飛行機の中で迷子になりますよ」

岡崎:「あー、それは問題無い。だって、サウスウエスト航空には座席指定という概念が存在しないから」

内山:「座席指定が無い?じゃあ、座席はどうやって決めるんですか??」

早い者勝ちです。チェックインした順番に飛行機に乗って、後は座席争奪戦です。先ほど”搭乗券”と言いましたが、実質的にはプラスチックのカードは飛行機に乗ることが出来る順番が書いてある”整理券”ですね。

だから、飛行機の中で『おい、ねーちゃん。俺の座席はどこだ?』っていうおじさんを目撃することもありません。だけど安心して下さい。搭乗客全員の座席は確保してあるので。

岡崎:「ただ、チェックインが遅いと2人分の座席を使うような体の大きな人の隣になって、『これなら立っていた方がマシ…』ってなるかもしれないけどな…」

内山:「座席ぐらい指定すればいいのに…。何で全席自由席なんですか?」

これは推測ですけど、その方が搭乗がスムーズなんじゃないですかね。座席が指定されていると、座席を探す時間も掛かるし、座席が決まってる安心感からなかなか席につかない人もいるじゃないですか。

岡崎:「あと、いつまで経っても搭乗口に現れない奴とかな…」

内山:「そっか、自由席にしたら皆良い席取りたいから早く飛行機に乗って座ってくれるわけか…」

前回話したようにスタッフが皆で協力して出発準備を整えても、乗客が席に付くのが遅かったら10分間ターンは出来ないですから、そういう意味でも全席自由席にするのは合理的だと思います。

他社に先駆けてチケット予約のオンライン化

内山:「こうやって話を聞くとレシート状のチケットとか、プラスチックの搭乗券とか実際に見てみたくなりますね」

残念ながら、今はオンライン化されているのでレシート状のチケットやプラスチック搭乗券はもう体験出来ないです。座席争奪戦は今でも変わらないですけど。ちなみに、サウスウエスト航空は現在一般的になっているeチケットのパイオニアでもあります。1995年には既にそのシステムを導入していました。

内山:「95年に?アナログなことをやっていたと思ったら次は最先端のことですか…。良いと思ったらどんなことでも取り入れてしまうんですね」