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アンゾフの成長マトリックス ~事業を拡大の方向性を考える~

アンゾフの成長マトリックス けいなび研修
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事業を拡大する戦略を検討する際に使われる有名な手法として「アンゾフのマトリックス」というフレームワークがあります。

アンゾフの成長マトリックスとは? ~4つの戦略 市場浸透、新製品開発、新市場開拓、多角化~

これは「経営戦略の父」と言われているイーゴル・アンゾフが提唱した手法で、「商品」「市場」を縦横の軸に取ったマトリックスを作成し、事業の拡大に当たって「①市場浸透」「②新製品開発」「③新市場開拓」「④多角化」のどの戦略を取るべきかを決めていきます。

アンゾフの成長マトリックス

例えば、「既存顧客」に対して「既存商品」を販売していく場合は第1象限の「市場浸透戦略」を取ります。新たに新製品を開発し、それを既存顧客に販売する場合は「新規商品」を「既存市場」に販売することになるので、第2象限の「新製品開発戦略」です。既存の商品を新規顧客に対して販売する場合は、「既存商品」と「新規市場」の組み合わせで第3象限「新市場開拓戦略」。そして、新商品を新規客に販売する場合は第4象限の「多角化戦略」です。

パン屋さんの事例

もう少し分かり易いように身近な事例で説明します。
ここに1件のパン屋さんがあったとしましょう。このパン屋さんはあんパンがおいしいことで定評があります。

このパン屋の店長さんが売上を伸ばすために、いつも来ている常連さんに対してあんパンを売っていくのであれば、「既存顧客」に対して「既存商品」戦略は「市場浸透戦略」です。

「いやいや、あんパンばかりじゃ飽きるだろう」ということで、新商品として「カレーパン」を開発してそれを常連さんに売るのであれば、「新商品」を「既存顧客」に売ることになるので、戦略は「新製品開発戦略」です。

「いや!うちのあんパンをもっと多くの人に食べて貰いたい!!」ということであれば、「既存商品」を「新規顧客」に対して売る「新市場開拓戦略」です。

「パンだけじゃこの先辛いかな~。普段うちの店に来ない若い子にもお店に来てもらいたいな~」ということで、お菓子を開発して普段お店に来ることのない若者に販売しようとする場合は「新商品」を「新規顧客」に販売することになるので「多角化戦略」です。

では、それぞれの戦略で具体的にどのようなことを行っていけばよいのでしょうか?

既にある商品を既存のお客様に ~市場浸透戦略~

市場浸透戦略は「既存のお客様により多くの商品を買ってもらう」ことが目的なので、そのための方策を考えます。多くの商品を買ってもらおうとした場合、購入頻度(来店頻度)を高めるか、購入量を増やしてもらうという方策が考えられます。

そのためには、例えば…
「ポイントカードを発行する(来店頻度を増やす)」
「あんパン5個で10%割引(購入量を増やす)」
などの方策が考えられます。

「毎日、朝食にあんパンを食べると朝から元気だよ!」というセールストークをする方法もあるかもしれません。また、店員さんの接客態度も重要ですね。接客が良いと何度も通いたくなりますから。

慣れ親しんだお客様に慣れ親しんだ商品を売るので、4つの戦略の中では一番取り組みやすい戦略です。

既存のお客様に新たな商品を ~新製品開発戦略~

新製品開発戦略は「既存のお客様に新たな商品を買ってもらう」ことを目的とします。既に自社との関係性が構築されているお客様に販売を行うので、市場浸透戦略の次に取り組みやすい戦略です。新製品を売り出す場合は、まずこの戦略を取ることが望ましいです。具体的な方策としては、既存のお客様に対してクロスセルやアップセルを行っていくなどの方策が考えられます。

例えば、
「カレーパンを売り出し。あんパンとセットで販売する(クロスセル)」
「大納言小豆を使った高級あんパンを売り出し、いつもあんパンを買ってくれているお客様に販売する(アップセル)」
などです。

既存製品との補完性がある場合はより売り出しやすくなります。

既存のお客様との関係性を上手く利用した方策を取ることが出来れば、成功の確率は上昇するでしょう。

新たなお客様を開拓する ~新市場開拓戦略~

一般的に販路開拓と言われているものがこれに該当します。多くの中小企業様が課題として販路開拓をあげられていますが、実は4つの戦略の中では比較的難易度が高いです。というのも、市場浸透戦略・新製品開発戦略は既に自社を知っていて関係性や信頼も構築されているお客様に販売をしていくのに対して、新市場開拓戦略は自社のことをよく知らない方に商品を販売していくので、自社を知ってもらい関係性を構築するというプロセスから始めなければなりません。そして、苦労して関係性を作ったのに受注には繋がらないということもよくあります。

ですので、私自身は「売上をアップさせたい」という場合はいきなり新規顧客開拓に取り組むのではなく、まずは既存のお客様にアプローチをしていくこと(市場浸透もしくは新製品開発戦略)を取ることをお勧めしています。

とはいえ「新規顧客開拓をしたい!」という場合は何をすればいいのか?新規顧客開拓をする場合はとにかく「自社と自社の商品を知ってもらうこと」に重点を置いた活動を行うことをお勧めします。当然のことですが、新規のお客様(見込み客)の方々は私たちのことを良く知りません。そして、私たちは良く知らないものを買おうとは思いません。であれば、まずは広告・PR活動を重点的に行って「何を売っているのか?」「どのようなメリットがあるのか?」「どこで買えるのか?」といった情報を積極的に発信していきましょう。

すべてを新しく始める ~多角化戦略~

新しいお客様に新しい商品を売り出す戦略が多角化戦略ですが、これは4つの戦略の中で最も難易度が高いです。そもそも、実績もノウハウも無いこともすることになるので難易度が高くリスクも高いです。ですので、いきなり多角化戦略にチャレンジするのはあまりお勧めできません。

もし、多角化を行いたい場合は一旦「新商品開発戦略」もしくは「新市場開拓戦略」を経由して最終的には多角化を目指していきましょう。

多角化への道筋

以上がアンゾフの成長マトリックスの説明です。シンプルであるが故に使いやすいフレームワークだと思いますので、ご興味がある方は是非これを使って事業の戦略を考えてみて下さい。