会社経営においては「キャッシュフロー」という指標が非常に重視されます。今回の記事ではなぜキャッシュフローが大切なのか?そもそもキャッシュフローとは何なのか?ということについて解説していきたいと思います。
キャッシュフローとは? ~キャッシュフロー=稼ぎ出した現金の額~
まずは、「キャッシュフロー」とは何なのか説明していきます。
キャッシュフローとは「お金の流れ」つまりは、「いくら現金を稼いだのか?」ということを表す概念です。(ちなみに会計上の「キャッシュ」という言葉には現預金だけではなく、3ヶ月以内に満期が到来する定期預金なども含まれますが、この話をするとややこしくなるので、キャッシュ=現金と理解してもらえれば大丈夫です)
例えば八百屋さんが現金1,000円で野菜を仕入れて、お客さんに現金2,000円で売ればキャッシュフローは1,000円です。言葉自体はカタカナで何となく取っ付き辛い感じがしますが、概念自体は非常にシンプルです。
なぜキャッシュフローが大切なのか? ~キャッシュが無くなると会社は潰れる~
キャッシュフローの意味を理解して頂いたところで、なぜキャッシュフローが大切なのか?ということについて説明をしていきます。
なぜ、キャッシュフローが重要なのか?その理由は…
『キャッシュが無くなると会社が潰れるから』です。
会社というのは、赤字を出しても、債務超過に陥ってもすぐに潰れるわけではありません。実際に何年も赤字が続いて債務超過の状態の会社でも経営を続けている会社はたくさんあります。ただ、キャッシュがなくなると、いくら利益が黒字の状態でも即潰れます(ちなみに黒字の状態で倒産することを「黒字倒産」と言います)。「少し前まで業績が良かった会社が突然潰れた」という場合は、キャッシュが無くなって事業の継続が困難になった可能性が高いです。
では、このような状態になることを防ぐためには何をしなければいけないか?まずは、自分の会社が「どれだけのキャッシュを稼いでいるのか?」ということを知らなければなりませんよね?だから、キャッシュフローという指標が重視されているのです。
利益を見ているだけでは駄目なのか? ~キャッシュフロー≠利益額~
しかし、「どれだけのキャッシュを稼いでいるのか?」を知ることが目的なのであれば、わざわざキャッシュフローなどという小難しい指標を見なくても、決算書の「利益(純利益)」を見ていればいいのではないでしょうか?純利益というのは対象となる期間内に稼いだ最終的な金額を表す数字なので、それを見ていれば十分な気もします。
ところが、実際はそうではありません。なぜなら、純利益の額とキャッシュフローの額は必ずしも一致するわけではないからです。どうしてそのようなことが起こるのでしょうか?
売上・費用の計上日と収入・支払日がズレるから
純利益とキャッシュフローの額が一致しない理由その1は「売上・費用の計上日と収入・支払日のズレ」です。多くの会社やお店では「掛取引」というものが行われています。売上や費用の決済を都度行うのではなく、一定期間内に発生した取引の決済を後でまとめて行うという取引です。今月に売ったものの代金を翌月に受け取るとか、今月買ったものの支払いを翌月に行うといった具合ですね。このような掛取引を行うと、利益の額とキャッシュフローの額が一致しない場合があります。
例えば、ある会社が現金で50万円の商品を仕入れたとします。そして、この商品を翌月末払いの契約で100万円で売ったとします。
この場合、今月の利益額は…
(売上)100万円-(仕入)50万円=(利益)50万円となりますが、売上の入金は翌月末になるので、今月のキャッシュは…
(売上収入)0円-(仕入支出)50万円=(キャッシュ)▲50万円となってしまいます。
このように、売上・費用の計上のタイミングと収入・支払のタイミングにはズレが生じるため、純利益の額とキャッシュフローの額は必ずしもイコールにはならないのです。
非現金支出費用(減価償却費や引当金)が存在するから
純利益の額とキャッシュフローの額が一致しない理由その2は「非現金支出費用の存在」です。
「非現金支出費用」とは字のごとく「現金の支出が発生しない費用」のことです。代表的なものに「減価償却費」と「引当金」があります。これらの費用は損益計算書には「費用」として計上されますが、実際に現金を支出するわけではありません。ですので、減価償却費や引当金が計上されている場合、その分の「現金を余分に持っている」ということになります。そうなると、その余分に持っている現金の分だけ、純利益の額とキャッシュフローの額はズレることになります。
意外と面倒なキャッシュフローの計算
さて、会社経営を行うに当たって非常に重要な指標となるキャッシュフローですが、これを計算しようとすると意外と大変です。その大変さからキャッシュフローの大切さは分かっていながらも、なかなか自分で計算してみるというところまでは至っていない方も多いかと思います。
ですので、次回の記事では簡易的にキャッシュフローを計算する方法について解説したいと思います。
(Toyama Suguru)
中小企業診断士事務所 マスタープランズ・コンサルティング代表
中小企業診断士。経営コンサルタントとして中小企業の経営コンサルティングを行っています。また、企業や商工会議所などでセミナー・講演会活動も行っています。著書:「小さな会社はまず何をすればいいの?~新米社長岡崎の10の物語~」
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