【サウスウエスト航空2nd.Season】サウスウエスト航空の組織と文化(全6章)

サウスウエスト航空の組織の事例研究 連載記事

※本記事は2020年1月から2月までメルマガで配信した記事の内容を再構成したものです。

第1章 従業員第一主義

常識に囚われない発想と創意工夫で結果を残してきたサウスウエスト航空ですが、なぜそのようなことが出来るのでしょうか?その秘密はサウスウエスト航空の組織にあります。今回からはサウスウエスト航空の組織について詳しく見ていきたいと思います。

従業員第一主義

サウスウエスト航空は「従業員第一主義」という非常にユニークなポリシーを持っています。

内山:「従業員第一主義ですか?『お客様第一主義』というポリシーはよく聞きますけど、『従業員第一主義』というのはあまり耳にしないですね」

そうですね。通常は通常はお客様が第一で従業員は二の次とすることが多いですが、サウスウエスト航空は違います。「当社は従業員を一番大切にします。お客様はその次です!」と堂々と宣言しています。そして、この「従業員第一主義」の姿勢で何十年も結果を残し続けてきました。

お客様が間違っていることもある

サウスウエスト航空には従業員第一主義を象徴する面白いエピソードがあります。あるとき、サウスウエスト航空のサービスに対してクレームを言ってきた利用客がいたそうです。

岡崎:「まあ、あれだけ変わったことしていたらクレームもあるだろうな…」

さて、問題はこのクレームへの対応です。サウスウエスト航空はこのクレームに対してどう対応したと思いますか?

内山:「うーん。分からないですけど、どうせ普通では考えられない対応をしたんですよね?」

さすが内山さん。勘が鋭いですね。このときサウスウエスト航空は社長自らがその利用客に手紙を書いて、「もう利用して頂かなくても結構です」と伝えました。

岡崎:「すごい強気な対応に出たな」

内山:「よくそんな対応ができましたね」

サウスウエスト航空は「お客様が間違っていることもある」と考えていますからね。だから、理不尽な要求には従わないし、自分たちのやり方が気に入らないのであれば、利用してもらわなくて結構というスタンスです。

内山:「普通は理不尽なことを言われても『お客様は神様』って考えて、泣き寝入りしてしまうことが多いというのになんという違い…」

実際サウスウエスト航空には時折「従業員がふざけすぎている」というクレームがあるようですが、従業員が正しい行動をしているのであれば、クレームに応じず、躊躇なく他の航空会社の利用を進める方針を貫いているようです。創業者のハーバート・ケレハーも「『顧客がいつも正しい』と考えることは、上司が従業員に対して犯しやすい最大の背信行為」だと言っていますからね。

岡崎:「徹底して従業員第一主義なんだな」

とは言っても、サウスウエスト航空はお客様をないがしろにしているわけではないです。「従業員を満足させることがお客様の満足に繋がる」と考えているからこそ、こういうスタンスで経営をしています。

内山:「それは、これまでのエピソードからも伝わってきますね」

チャレンジする風土

岡崎:「だけど、ここまで徹底して従業員第一主義になっていれば、従業員もモチベーション高く仕事が出来るだろうな」

そうですね。会社が自分たちを尊重して、正しいことは正しいと認めてくれるので、積極的に行動するようになって、斬新なアイデアも生まれるでしょうね。サウスウエスト航空が常識に囚われない方策を次々と行って結果を残し続けることが出来るのは、「従業員第一主義」のポリシーをはっきりと打ち出して、それに従った経営を行っているからだと思います。

第2章 経営者目線で働く従業員

第1章ではサウスウエスト航空の組織としてのポリシーについてお伝えしましたが、今回は従業員一人ひとりの意識の話です。

一人ひとりが経営者

サウスウエスト航空では従業員一人ひとりが経営者や事業主として働いていると言われています。

岡崎:「会社に雇われているという感覚ではなくて、会社やお店を経営しているという感覚働いているってことだな」

そうです。だから、彼らは「どうしたら自分は会社やお客様に貢献出来るのか?」ということを常に意識しながら仕事をしているようです。

岡崎:「それってすごいことだよな。俺もサラリーマンだった経験あるから分かるけど、会社に雇われているって感覚だと、どうしても自分の保身とか上司の視線が気になって内向きに仕事をしてしまうだろ?」

内山:「それ分かります。『面倒なことに巻き込まれたくない』とか『ことなかれ主義でいこう』って思って、ついつい消極的に仕事をしてしまいますね」

それでは駄目だということは分かっているんですけど、ついついやってしまいます…。そして、そういう人が増えてくると会社の雰囲気が悪くなって、業績も落ちたりするわけですが、サウスウエスト航空の場合はそれがありません。

内山:「なるほど。だけど、具体的にサウスウエストの従業員の人たちはどんなことをしているんですか?」

経営者目線で働く従業員の事例

では、ここからは少し事例を紹介していきます。

少しでも燃料費を節約するフライトしようとするパイロットの事例

航空会社に限りませんが、運送業にとって燃料費っていうのは経営に大きな影響を与える要素です。サウスウエスト航空のパイロットたちはこのことをよく自覚しているので、出来る限り燃料を使わない飛び方をしようとするそうです。

内山:「燃料を使わない飛び方?出来るだけ短い距離のルートや高度で飛ぶってことですか?」

簡単に言ってしまうとそういうことですね。

岡崎:「だけど、そんなことどこの航空会社のパイロットもやってるだろ?」

ただ、サウスウエスト航空のパイロットはルートや高度をすごく細かく選んでいるらしいです。飛行機を飛ばすときには地上の管制官と交信して、飛びたいルートや高度を管制官にリクエストしながら飛行コースを決めていきますが、サウスウエストのパイロットはそのリクエストがやたら多いと言われています。常に上空の風向きとかを考えながら操縦をしているんでしょうね。他にも空港の運営のことも頭に入れながら、一番早く着陸出来る滑走路をリクエストしたりもしているようです。

岡崎:「それってかなり大変そうだな…」

そうですね。私たちで言えば常に燃費を気にしながら車を運転させているのと同じですからね。簡単なことでは無いと思います。サウスウエスト航空のパイロットたちは「自分たちの操縦が経営に影響を与える」という意識が強いからこういうことが出来るのでしょうね。

ホチキスを必ず返してもらおうとするカウンタースタッフの事例

次は空港のカウンタースタッフのエピソードです。細かい話ですが、このエピソードも面白いです。

あるとき、サウスウエスト航空のカウンタースタッフのところに他社の従業員がホチキスを借りに来たことがあったらしいです。サウスウエスト航空の従業員は快くホチキスを貸したのですが、そのあとの行動が面白いです。

内山:「何をしたんですか?」

ホチキスを持った他社の従業員の後について行きました。

内山:「何でそんなことを?」

ホチキスを貸したサウスウエスト航空の従業員はこんなことを言ったらしいです。「ホチキスが返ってこなかったらウチの会社が損をする。だから、きちんと返してもらえるように付いてきた」と。

岡崎:「他社の従業員の人はちょっと引いただろうな…」

そうかもしれませんね。ただ、この行動と発言は「少しでも経費を抑えよう」という意識がないと出来ないことだと思います。細かいことですが、このようなことからもサウスウエスト航空の従業員の意識がうかがい知れます。

意識の高さで無理難題を解決

以前、サウスウエスト航空の10分間ターンの説明をしましたが、あれも、10分間でターンさせることのメリットを従業員が経営者の視点で理解出来ていたからこそ実現できたのだと思います。経営者の視点で短時間で折り返し運航をすることのメリットを理解していたから、無理難題でも「何とかしよう」と皆で知恵を出し合って対応出来たのだと私は思います。

岡崎:「ユニークな機内アナウンスもそうだな。あれも、経営者目線でお客様のことを考えていないと出来ないことだと思う」

内山:「サウスウエスト航空のユニークな施策は従業員の方々の意識の高さにも支えられているんですね」

第3章 サウスウエスト航空の人事制度と社風

今回はサウスウエスト航空がどのようにして経営者目線で考え・行動出来る従業員を育てているのかを、人事制度や文化の面から迫ってみたいと思います。

従業員への利益分配制度

サウスウエスト航空には利益分配制度という制度があって、営業利益の一部が従業員に分配される仕組みになっています。

内山:「頑張ったら頑張った分だけ成果が給料に反映される制度になっているんですね」

岡崎:「ストックオプションや業績連動賞与みたいなものだな」

そうです。今でこそストップオプションや業績連動賞与は一般的になっているが、サウスウエストは70年代にこの制度を導入していました。

内山:「会社の業績が給与に反映されるなら、従業員の人たちも経営者目線で行動するようになりますね」

一般的には、利益と給与を連動させると会社の利益が自分事になるので、当事者意識が高まって経営者目線で考え・行動出来るようになると言われてはいますが、単純にそうはいかないのが難しいところなんですよね…。

岡崎:「成果を給与に反映するような人事制度を作ったけど、思ったほど成果が上がらなかったって話もよく聞くしな…」

内山:「何でそうなってしまうんですかね?」

報酬としてお金以外のものを求める人も多いですからね。「給与さえ上げれば働いてくれるだろう」って考え方で業績連動の給与制度を導入すると失敗する確率が高くなると思います。

岡崎:「『人は、パンのみにて生くるものにあらず』ってやつだな」

内山:「でも、サウスウエスト航空では成功しているんですよね?それは何でですか??」

サウスウエスト航空は給与面と合わせて精神面での報酬も貰える風土を作り上げましたからね。その影響が大きいと思います。

つながりを奨励する文化

サウスウエスト航空は家族的な社風を重視することで有名です。従業員の間だけでなく、従業員の家族を含めたつながりを推奨していて、会社のパーティーには家族も招待されるし、
従業員の子供を定期的に職場につれてくることも奨励されるという独自の文化があります。

岡崎:「子供が職場にくるならお父さんお母さんは頑張っちゃうよな」

あと、何かにつけてパーティーをすることでも有名です。

内山:「パーティー開いて何をするんですか?」

パーティーで貢献した従業員をお祝いするんですよ。サウスウエスト航空には〇〇賞という賞がたくさんあって、ユニークなものだと「トップ・クリーナー賞」というものもあります。そして、その表彰を受けるパーティーには家族も招待されているから表彰された人はさらに頑張ろうという気持ちにもなりますよね。

承認欲求を満たす

このようにサウスウエスト航空では給与面でも精神面でも従業員の努力に報いるような仕組みが作られています。この仕組みによって従業員の人たちはは承認欲求が満たされるから、高い満足度を得て「次も頑張ろう」という気持ちになります。

岡崎:「自分を承認してくれた仲間のために頑張ろうという気持ちにもなるよな」

内山:「家族のために頑張ろうとも思いますよね」

そうですね。人によって何のために頑張るのかは違うと思いますが、サウスウエスト航空は従業員の人たちの承認欲求を満たして意欲を引き出すことで、経営者目線で考え・行動する人材を育て、長年に渡って成果を出し続けているんだと思います。