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【組織編】組織って何だ? ~組織を作るための3つの条件~(全10章)

連載記事
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※本記事は2016年5月から6月までメルマガで配信した記事の内容を再構成したものです。

第1章 組織と集団の違い

組織編の第1章のテーマは「組織と集団の違い」です。組織を作っていく上で組織と集団の違いを知っておくことは重要なことなので是非ご一読下さい。

組織と集団の違い

組織と集団ですが、一見同じように見えます。「人が集まっている状態」という面では同じですからね。ただ、この2つには大きな違いがあります。では、何が違うのかというと…。

まず、集団というのは人の集まりです。何となく人が集まっている状態であればそれは集団です。この集団が…

①構成メンバーが『共通の目的を持つ』
②構成メンバーの間に『役割(責任)が存在する』
③目的を達成するための『行動が統制されている』

これら3つの要素を持つことで、集団は組織に進化します。

例をあげて説明すると…

おじさんたちの草野球チームAとチームBがあったとします。年齢層等々は両チームとも同じです。

チームAはおじさんたちがなんとなく「野球好きが集まって楽しくやろう」ということで週末に集まって練習して、たまに他チームと試合をして、飲み会をして…。このような感じです。この場合、チームAは集団です。

岡崎:「明確な目的も、役割も無いしメンバーの行動を統制するわけでもないから集団ってことだな」

一方、チームBも活動自体は一見同じような感じですが、「地区で一番強いチームになる」という目的をメンバー全員が持っています。また、メンバーの中で監督をやる人、マネージャーをやる人会計をやる人などが決まっており、それぞれが役割をこなします。そして、このチームは毎週末決まった日時に練習があり、毎月試合が計画されています。練習の後にはチームミーティングもあります。この場合、チームBは組織です。

内山:「目的があって役割も決まっているし、ルールに基づいて活動しているから組織ってことですね」

学生の時のイベントで強いクラスと弱いクラスがあったのはなぜか?

皆さんが学生のとき(中学とか高校のとき)体育祭とか合唱大会とかクラス対抗のイベントがありましたよね?あのとき、やたら強いクラスと弱いクラスがあったのはなぜでしょう?

強いクラスには「運動神経がいい奴が集まっていたから」ですか?
弱いクラスには「音痴しかいなかったから」ですか?

内山:「うーん。何でだろう?強いクラスにも運動神経悪い奴はいたし、弱いクラスにも歌が上手いやつはいたけどなぁ」

岡崎:「学生のころは個人の能力の差だと思ってたけど、違いはそこじゃないな」

そうですね。岡崎さんが言うように個人の能力差ではありません。そもそも普通の学校で個人の能力の差なんて大してありません。それに、クラス編成のときに「運動神経いい奴を集める」とか「歌が上手い奴を集める」とかそんな偏った編成はしません。

では、何が違ったのか?思い出してみると、強いクラスには「皆で優勝しよう」という雰囲気があったり、リーダー格の奴がしっかりしていたり、毎日練習したりしてませんでしたか?

内山:「確かにそうだ」

つまり、強いクラスは組織になっていたのに対して、弱いクラスは集団のままだった。この違いが強いクラスと弱いクラスの違いです。今回は例として学校のクラスをあげましたが、これは学校でも、会社でも、地域社会でも国でも同じことです。

組織が出来るまでのプロセス

では、人はなぜ組織を作ろうとするのか?それは…

「1人ではやれないことをやるためです」

人間1人の力ではやりたくてもやれないことがたくさんあります。だから我々は仲間を集めて組織の力でやりたいことを実現していくのです。

実際に組織が出来ていくプロセスをざっくりと書くと下のようなイメージです。

STEP1「やりたいことを思いつく、とりあえず自分で頑張ってみる」

STEP2「一人で出来ることの壁に突き当たる」

STEP3「とりあえず、仲間を集めて頑張る」

STEP4「頑張ってはみたが、頭数を集めただけではダメだと気が付く」

STEP5「徐々に組織化していく」

このようなプロセスで組織は出来ていきます。さて、皆さんや皆さんの会社はどの段階でしょうか?

岡崎:「組織と集団の違いを理解してもらったところで、次は組織の条件1『目的を共有する』について説明していきます」


第2章 目的の共有

第1章では集団が組織に進化する要素として「目的の共有」と「役割」と「行動の統制」の3つの要素があるとお伝えしましたが、ここからはこの3つの要素のうち「目的の共有」について詳しく説明していきます。

組織の第1条件 目的の共有

「①目的の共有、②役割が存在する、③行動が統制されているだったな」この3つが組織になるための条件ですが、この中でも、「目的の共有」が最も重要です。はっきりとした目的があれば、そこに向かって組織のメンバーが団結出来ますからね。逆に目的が無いと、メンバー個々人がバラバラに動いてしまうので、組織としての団結力は生まれません。

内山:「だけど、目的を共有するって言っても中々難しいですよね?良い目的というか、共有しやすい目的ってあるんですか?」

皆が共有出来る目的の条件

内山さん。難しいことを聞いてきましたね…。
私も「目的を決めるときにどのような目的にすればいいのか」という問題はあれこれ考えたのですが、そんな中で、自分の経験を振り返ってみたり、色々な方のお話を聞いたり、企業の事例とか歴史の本とかを読んだりしているうちに「これは必要だな」と考えた条件をいくつか紹介します。

①シンプルであること
②分かり易い言葉で表現されていること
③組織のメンバーが「自分に関係する」と思えること

この3つの条件を満たすものが共有しやすい目的ではないかと考えています。

内山:「シンプルで分かり易くて、自分に関係すると思える目的か…」

それぞれの条件をもう少し詳しく説明していきます。

条件1「シンプルであること」

目的は出来るだけシンプルにする必要があります。出来れば1つ。多くても片手で数えられるぐらいが理想です。なぜかというと、目的が多くなると組織として何がしたいのかがブレるからです。

例えばある会社の目的が次のようなものだったとします…。
「わが社の目的は、品質が良い製品を安い価格でスピーディーに提供し、お客様の笑顔のために
おもてなしの心を持って対応し、従業員の生活を向上させながら世界に名だたる企業になること」

この会社何がしたいか分かりますか?何となく気概は伝わってくるかもしれせんが、「で、結局何がしたいの?」ってなりませんか?目的が多くなると何がしたいのかがブレるとはこういうことです。

内山:「確かに、あれもこれもってなると目的が不明確になりますね。『これがやりたいんだ!』ってことをビシッとひとことで語れるものがベストですね」

岡崎:「目的が複数ある場合は、『第1に〇〇、第2に〇〇』みたいな感じで優先順位を付けるって手もあるよな」

条件2「分かり易い言葉で」

目的は普段使っている分かり易い言葉で表現しましょう。変にかっこつけて普段使わないような言葉を使う必要はありません。

例えば…
「お客様を笑顔にする」を「お客様のCSを…」って言う必要はないですし、「お客様に気持ちよく過ごしてもらう」を「ホスピタリティーを…」と言う必要は無いです。

何となく横文字とか四文字熟語を使った方が、「目的決めたぞ!」って気もしますが、伝わらなければ意味がないです。

内山:「『CSって何?ホスピタリティーってどういうこと?』って思われたら意味がないですからね」

岡崎:「組織には色々な人がいるから、誰でも分かる言葉で表現することが大切だな」

条件3 「自分達に関係があると感じられること」

目的というものは「自分に関係ある」「自分にもメリットがある」と思うから共有が出来ます。メリットが感じられないと、「ふーん、頑張ってね」と思ってどこか他人行儀です。これでは「目的を共有している」とは言えません。

例えば、ある会社の目的が「規模を大きくして、日本一の会社になる」だったとします。これ一見良いように思えますが、そう思っているのは目的を作った側だけだったりします。共有するメンバーは意外と「日本一になるのは分かったよ。で、それで自分たちはどうなるの?」って思ってたりします。

目的を作る側はいいです。それなりの想いがあるので「日本一になったら、こうなる!」っていうのがイメージ出来ていると思います。しかし、メンバーの側がイメージ出来ているとは限りません。置いてけぼりになってるかもしれません。意外とここは盲点です。

内山:「リーダーの一人よがりでは良くないってことですね」

岡崎:「メンバーの考えや思いも聞いた上で目的を決めたら良い目的が出来そうだな」


第3章 自分の役割は何だ?

第3章では組織化の条件その2「役割(責任)が存在する」について説明していきたいと思います。

人を動かすためには役割が必要

皆さんは会社でも、学校でも、地域のコミュニティーでも良いのですが、自分がリーダーになったときに「メンバーが動いてくれない」ということで悩んだり困ったりしたことはありませんか?

そんなとき、メンバーを動かすために試して頂きたいことがあります。
メンバーに役割を与えてみて下さい。役割の中身はどんな小さなことでも良いです。
そうすると、役割を与えられた人は動いてくれるようになります。

内山:「そんなことで動いてくれるようになるんですかね?」

岡崎:「いや。意外と効果あるぞ。日常生活でも使えたりするし。内山君は救急車の正しい呼んでもらい方知ってる?」

内山:「救急車の正しい呼んでもらい方なんてあるんですか?」

岡崎:「まあ、ある種の例え話なんだけどな…」

岡崎さんの言っている正しい救急車の呼び方というのは、街中で救急車を呼ばなければいけない状況になったときに、
「誰か救急車をお願いします!」という言い方では駄目だという話ですね。

内山:「??? じゃあ、どうやって呼ぶんですか?」

岡崎:「『誰か』ではなくて『あなた!』ってお願いするんだよ。『そこの眼鏡の女性』とか『スーツを着た男性の方』って言い方でも良いけど、とにかく特定の人を指名してお願いするってこと」

私は幸いにも今まで街中で救急車を呼ばなければならない状況になったことはないので、実際に経験したことは無いのですが、このように人を特定してお願いをすると、その人が動いてくれると言われています。

役割を与えられることで責任感が生まれる

では、なぜ「あなた!」と指名をすると動いてくれるようになるのか?
それは、指名されたことによって役割が与えられて「その役割を果たさなければ」という責任感が生まれるからです。指名されることによって他人事が自分事になると言ってもいいでしょう。

内山:「なるほど。確かに指名されて役割が与えられたら責任を感じますね」

これは会社などの組織でも同じです。まとまりがある組織。メンバーが活発に動く組織ほど、一人ひとりに役割が与えられています。役割が与えられているからこそ、一人ひとりに責任感が生まれて動いてくれるようになります。

肩書はあるけど、役割は無し

組織の問題に悩む会社さんほど、役割が不明確なケースが多いように感じます。部長とか課長といった肩書はあるけど、では部長や課長が何をするのか決まっていなかったりします。

岡崎:「部長って肩書だけど、実際にやってることはプレイヤーと同じだったりするとかな」

そういう会社さんに限って、「部長が仕事をしない」とか「課長としての意識が…」という話が出てきたりするから困ったものです。役割が不明確なまま肩書だけ付けられている部長さんや課長さんが気の毒です。

このような会社さんは部長さんや課長さんの愚痴を言う前にまずは、社内での役割を決めましょう!
部長の役割とは何なのか?課長は何をすべきなのか?を決めましょう。肩書を基準にしなくても、入社年次などでも良いです。新入社員はこれが役割。入社3年目はこの役割。5年目からはこういう役割。といったように役割を決めましょう。

そして、その役割を本人に伝えて理解してもらいましょう。その人の資質や能力についてとやかく言うのはその後です。

内山:「確かに、何がその人の仕事(役割)なのか決められていないのに文句を言われるのはおかしいですからね」

杓子定規になり過ぎない

とはいうものの、役割が決められたからと言って「それは俺の役割じゃない!」と言って仕事を突っぱねるのも考えものです。

特に中小企業の場合は人手が少ないので、必ずグレーゾーンの仕事があります。そのような中で「俺の役割じゃない!」と言っていたら仕事が回らなくなります。そして、巡り巡っていずれは自分が困ることになります。

だから、役割を与えられたからと言って杓子定規な態度に出るのではなく、本来の役割を意識しつつも柔軟な姿勢で仕事をするようにしましょう。

内山:「助け合いとか持ちつ持たれつってことも重要ですからね」

岡崎:「それに、グレーゾーンが気になるようであれば、新たに役割を設置しても良いわけだからな」


第4章 責任と権限の話

「責任と権限一致の原則」

組織で役割を決めるときには「責任と権限一致の原則」というものがあります。これはどのような原則かと言うと…
「組織のメンバーに責任を与えたら、権限も一緒に与えないといけない」もしくは…
「権限を与えたら、責任も与えないといけない」
という考え方です。

私自身は
「役割(責任)を決めたら、出来る仕事の範囲(権限)も一緒に決めないといけない」
と解釈しています。

岡崎:「責任と権限はセットってことだな」

この考え方重要です。前回「肩書きを与えられたけど、何するのか分からない」ということを書きましたが、「肩書きを与えられたけど、どこまで自分が決めていいのか分からない」という問題も組織には結構あります。要は「決済権限がどこまであるのか分からない」というケースです。これは中小企業(大企業でも)では結構管理者の方から聞く悩みです。

内山:「『お前に任せた!』って言われたけど、どこまで自分で判断していいのかが分からなくて、結局何も出来ないってケースですね」

岡崎:「任せた方からしたら『やる気が無い』って思いがちだけど、実はそうじゃ無かったりするんだよな」

ちなみに逆のケースもあります。「勝手に判断して怒られる」ってケースです。「これぐらいいいだろ」ってことが「よくなかった」ってケースです。これも、権限の線引きをしておけばある程度は防げると思います。

岡崎:「ここまでは自分で判断してOK。ここからは相談が必要。って決めておくってことだな」

仕事を任せるということ

上で「責任と権限の原則」の話を書きました。一応これが原則です。でも、この原則に例外があります。「責任と権限が分離する状態」になることがあります。

それが「権限移譲」という行為です。簡単に言うと、「本来自分がやることだけど、部下に任せる」という行為です。権限移譲を行う理由は、「自分の負荷を減らすため」とか「部下を育てるため」とか色々ですが、皆さんも普段の仕事の中で行っていることだと思います。

責任と権限の原則からすると、権限を委譲すると責任もそのまま移譲すると考えがちですが、私は権限を委譲させても責任はそのまま残ると考えています。

内山:「例えば、上司から部下に権限を委譲しても責任は上司に残るってことですか?」

そうです。かと言って、部下の方が何の責任も負わなくても良いわけではないですが。

岡崎:「要は部下に権限を委譲しても上司としての責任は取れってことが言いたいんだろ?」

そうです。当然と言えば当然のことなのですが、たまにこのことが分かっていない人がいます。業務で何かしら問題が発生したときや、状況の報告を求められた時に「それは部下に任せているから私は知りません」というようなことを平然な顔で言う人です。酷い人ですと「それは部下がやったことだから私は悪くありません」と言い出したりします。

内山:「それは良くない。けど、残念ながらたまーにいるんですよね…」

岡崎:「『私は知りません・悪くありません』なんて平然と言うのは『私は責任を果たせませんので、この役割から外して下さい』って言ってるのと同じだと俺は思うぞ」

内山:「権限移譲をするときは『部下に任せたからといって、自分から責任が無くなるわけではない』と考えないといけないですね」


第5章 皆が同じ方向に進むようにする

ここからは組織化の条件3「行動が統制されている」について説明をしていきます。

「行動の統制」ってどういうこと?

統制なんて言葉を使うと仰々しいですが、「組織として管理されている」と捉えて頂ければ良いです。

岡崎:「要は『目的地にたどり着くための方法やルートやペースをコントロールしていくってこと』だな」

そうです。つまりは「皆が同じ方向に進むようにコントロールをしていく」ということです。

自由闊達≠管理されていない

少し話がずれますが、世の中にはたまに管理(行動の統制)について誤った認識があります。「自由闊達=管理しなくてよい」という認識です。

自由闊達な雰囲気の会社(例えばグーグルとかテレビ等で紹介されるようなベンチャー企業)は一見管理がされていないように見えるので、このような勘違いが生まれるのですが、これらの会社は管理をしていないわけではありません。ただこれらの会社は「細かなことまで管理する必要がない」から管理していないように”見える”だけであって、管理そのものを行っていないわけではありません。

内山:「メンバー一人ひとりが自己管理出来ているから、細かいことまで口出ししなくてもいいってことですね」

管理を行うために必要なこと

では、管理を行うためには何をしなければならないのか?やらなければならないことは次の3つです。

①「ルートやペースを示す」=管理の基準をつくる
②「進み具合を見る」=モニタリングが出来るようにする
③「問題があれば修正or調整する」=フォロー出来る場をつくる&フォローする

これら3つのことが出来て初めて「管理が出来ている」ということになります。

内山:「なるほど…。具体的には何をすればいいですか?」

基準なきところに管理なし

まずは、何が正常で何が異常なのかを示す基準を作りましょう。

岡崎:「基準が無いと管理も出来ないからな」

そうです。基準の大切さを例え話で説明しましょう。

ある製造業の会社があるとします。この会社の現在の不良率は3%です。さて、この会社の状態は今「正常」ですか?「異常」ですか?

内山:「そんなこと言われても3%が良いのか悪いのか分からないから判断のしようが無いですよね?」

その通りです。答えは「分からない」です。私は比較対象となる不良率の業界平均も過去の推移も示してないですから、これだけの情報では3%という数字が良いのか、悪いのかなんて分からないはずです。ここでもし私が「業界平均の不良率は1%」という基準を示したら、この会社は「悪い=異常」となります。もし、「業界平均の不良率は10%」と言ったらこの会社は「良い=正常」です。

岡崎:「ほら、基準を示せば管理できるようになるだろ?」

内山:「そうですね。しっかりと管理を行うためには具体的な管理基準をまず作る必要があるんですね」


第6章 何事も基準が大事

基準をつくらずに管理を行おうとするとどうなるか?

では、ここからは基準の重要性を再認識するために、あえて強引に基準をつくらずに管理を強行したとしたらどうなるのかを考えていきましょう。

岡崎:「分かり易いように交通ルールを例に説明していきます」

日本の道路には制限速度が設けられています。一般道は大体30km/h~60km/h。高速道路だったら80km/h~100km/hです。ところで、なぜこんなことがいちいち決められているのでしょうか?安全運転をするためだったら、道路のところどころに「常識的なスピードで運転しましょう!!」とでも書いておけばいいはずです。では、なぜ細かく制限速度が決められているのか?

内山:「それはお巡りさんが僕たちの運転スピードを管理するためじゃないですか?」

内山さんが言う通りです。仮に制限速度が無い道路があったとしましょう。そして、皆さんはそこでスピード違反を取り締まる警察官だったとしましょう。

岡崎:「さあ、皆さん道路を走る車が安全運転するようにドライバーのスピードを管理して下さい!」

いかがでしょう?困りませんか??
「スピード違反を取り締まれ」と言われてもどれぐらいのスピードを出している車を捕まえればよいか分からないですよね?これが基準をつくらずに管理を行おうとすると発生する弊害その1「管理する側が何をすればいいのか分からなくなる」です。

しかし、「何をすればいいか分からない」からと言って仕事をしない訳にはいきません。スピード違反の取り締まりが警察官としての役割ですから。

内山:「基準となる制限速度が決まってないなら、しょうがない。主観で判断してしまいましょう」

そうですね。仕事をしないわけにはいかないですから、80km/h以上がスピード違反だと思うなら80km/h以上で走っている車を捕まえましょう。「いやいや、40km/h以上は出し過ぎ」と思うなら40km/h以上の車を捕まえましょう!

岡崎:「ただ、そんなことをしたら別の問題が発生するぞ」

主観で管理をするとどうなるか?

岡崎さんが言うように主観で管理を行うと別の問題が発生します。今度はドライバー視点(管理される側の視点)で考えてみましょう。

皆さんが道路を走っているときに警察官Aが取締りをしているとします。警察官Aは「80km/h以上はスピード違反」と考えているので、皆さんが80km/h以上のスピードを出すとスピード違反として捕まえにきます。

別の日に同じ道路を走っていると今日は警察官Bが取締りをしていました。警察官Bは「40km/h以上はスピード違反」と考えているので、皆さんが40km/h以上で走ると捕まります。

内山:「こんな状況だったら気分よく車を運転出来ない…」

そうですね。しかし、さらに厄介な警察官が現れました。新人警察官Cです。この人は警察官A・Bと違って具体的な基準が無く、「その日の気分」で違反速度を決めてきます。昨日は80km/h出していても捕まえなかったのに、今日は50km/hで捕まえるということをしてきます。本人は「自分なりの考えがある」と言っていますが、どう考えても目の前の状況でコロコロ判断を変えているとしか思えません。

岡崎:「どう考えても理不尽すぎる…」

さて、こんな状況になったらどう思いますか?「人によって言うことが違う」「その日の状況で言うことが違う」こんな状態でスピードの管理をされたいと思いますか?ルールに従いますか??この状態になったら間違いなくドライバーは混乱するでしょう。そして、中には「こんな理不尽なことに従えるか!」とルールを守らない人も出てきます。

これが基準をつくらずに管理を行おうとすると発生する弊害その2『管理される側が混乱する。ルールに従わなくなる』です。

岡崎:「交通ルールの例え話だと笑い話だけど、普通に会社でも起こり得るよな」

内山:「そうですね。ついつい基準を作らずに管理してしまうことはやってしまいがちですからね」

基準をつくらないと管理が出来ないと言った理由がお分かり頂けたでしょうか?今回は交通ルールで説明しましたが、警察官を経営者・管理者、ドライバーを従業員と読み替えれば会社やその他の組織でも同じことです。

第7章 モニタリングをしよう

管理基準を作ったら、次は今の状態が基準内に収まっているかどうかをチェックするために「モニタリング」という行為が必要になってきます。

モニタリングって何ですか?

まずはモニタリングという言葉の意味について説明しておきます。モニタリングとは…。
「現状を継続的かつ具体的に把握する作業」
のことです。

岡崎:「お医者さんが手術の時に心電図や血圧を見ている様子をイメージしてもらえると分かり易いかも」

内山:「工場で作業員の人が『温度異常なし!』ってやっているのもモニタリングですね」

他にもダイエットをしている人が毎日体重をチェックするのもモニタリングですし、車を運転しているときにスピードを確認するのもモニタリングです。特別なことではありません。皆さんが日常的にやっている行為です。

モニタリングで行うこと

内山:「モニタリングでは具体的にどんなことをすれば良いですか?」

モニタリングではまず数値や行動を見て今の状態を確認します。今の状態が基準から外れていたら異常を知らせます。正常な状態ならそのままです。以上です。

内山:「それだけ?」

それだけです。非常に単純なことです。

岡崎:「やることは単純だけど、簡単では無かったりするんだよなこれが…」

そうなんです。特に継続することが難しい。ですので、モニタリングを上手に行うためのコツをいくつか紹介しておきます。

モニタリングを行うためのコツ

①モニタリングの目的をはっきりさせておく

情報を取るときは目的をはっきりとさせておきましょう。「その情報を何に使うのか?」ということです。

内山:「目的が分からないことは長続きしないですからね」

②担当とタイミングを決めておく

情報を「誰が」「いつ」集めて、それを「誰が」「いつ」集計するのかはしっかり決めておきましょう。「毎朝、Aさんがやる」とかそんな感じです。これを「誰かがそのうちやる」といった状態にしておくと、誰もいつまでたってもやりません。

岡崎:「役割分担と出来ている・出来ていないの基準をはっきり決めるってことだな」

③コツコツ行う

例えば、伝票等を使って日々の売上数をチェックするときは仕事をまとめて処理することは止めましょう。毎日コツコツやれば大した負担でもないことがまとめて処理すると大きな負担になります。

内山:「面倒になってまとめてチェックしてしまいがちですけど、そういことをすると続かなくなるんですよね…」

他にも、定型のモニタリングフォーマットを準備したり、管理ソフトを導入したりすることも有効です。

地味だけど重要な仕事

モニタリングの仕事はとにかく地味です。そして面倒です。しかも、利益には直結しません。はっきり言って、モニタリングで情報を集めたところで儲けは出ません。しかし、ここで情報をコツコツ集めることが、管理レベルを高めて組織の力を上げていくことに繋がります。

岡崎:「実際に儲かっている会社はモニタリングもしっかり出来ているからな」

内山:「地味ですけど重要な仕事なのでしっかりやらないといけないですね」


第8章 フォローの仕組みを作る

異常が出たらどうするか?

仕事の状況をモニタリングしていると、度々仕事の異常に遭遇します。

岡崎:「『不良率が上がった』とか『予定通りに仕事が進んでいない』といったようなことだな」

では、モニタリングをして異常を発見した後はどうするか?当然何らかのアクションを取って、異常を正常に戻すために対処します。当然と言えば当然のことです。このためにわざわざ基準をつくってモニタリングしてるわけですから。ここまでは皆さんやっていると思います。しかし、問題はこの後です。

「対処の後は対処した内容と結果をフォローしましょう」

内山:「『異常が起きてるから対処しておけよー』で終わるのではなくて、『あれどうなった?今どんな状態??』ってことも確認しましょうってことですね」

発生した異常が大きな問題になっていたら別にこのようなことをわざわざ言わなくてフォローはするでしょうが、日常で起こる細かな異常は確認を忘れたり、つい怠ってしまうことがありがちですので、「異常が起こったら、その後フォローする」ってことは常に心がけておきましょう。

フォローが出来る仕組みをつくろう

ところが、このフォローという行為を日常的にやろうと思うとなかなか難しいです…。

内山:「大切なことだってことは分かっているんですけどね…」

なかなか心構えだけでは上手く行かないですし、続かないです。ですので、フォローが出来る仕組みを作りましょう。

岡崎:「『フォローが出来る環境をつくってしまおう』ということだな」

「定例ミーティング」を始めよう

「フォローが出来る仕組み(環境)」と言うと難しく聞こえますが、やること自体は単純です。

『定例のミーティングをやりましょう』

これだけです。毎月とか毎週とか毎日とかの頻度で、メンバーで打ち合わせをしましょう。そして、その場で「この前●●で異常出てたけど、あれってどうした?」ってことを確認しましょう。

これだけのことで結構違うものです。個別に都度フォローをしようとすると、フォローする側はつい忘れてしまうこともありますし、フォローされる側もタイミングが無くて言いそびれてしまうこともあるので、それを防ぐためにミーティングをするようにしましょう。

内山:「定例にするのもポイントですね」

岡崎:「定例だと日時が決まっていて参加しやすいからな」

内山:「でも、定例ミーティングってどれくらいの頻度で開催すればいいんですか?」

ミーティングの頻度

定例ミーティングというと、「どれぐらいの頻度でやればいいの?」ということが問題になりますが、頻度としては…。

経営レベル:月に1回~2回ぐらい(月次)
部門レベル:週に1回ぐらい(週次)
チーム(班)レベル:毎日

このような頻度が一般的かと思います。この辺りは会社の組織の規模や状況によって変わってくるので、適宜決めて下さい。

あと1回当りの時間ですが、あまり気合を入れすぎて最初から長い時間やらない方が良いです。特に、これまであまりミーティングをやったことが無い組織の場合は、あまり最初から長い時間みっちりやろうとすると長続きしません。最初は5分ぐらいから始めれば良いです。そして、しばらくやってみて慣れてきたり、話す内容が多ければ時間を徐々に延ばしていくと良いかと思います。

岡崎:「とは言っても、日次のミーティングなら長くても15分ぐらいで納めたいけどな」

内山:「月1のミーティングも1時間程度には納めたいですよね」

ということで、今回はフォローについてでした。簡単でいいのでフォローが行える仕組みを作って上手く組織運営が出来るようにしてみて下さい。

第9章 リーダーの仕事

組織の話をすると高い確率でリーダーシップの話が付いて回ります。ということで、ここからはリーダーシップに関しての話をしていこうと思います。

リーダーの仕事

組織の中でチームを引っ張っていく人のことをリーダーと言います。

経営者(社長)、キャプテン、何かの会の会長、首相・大統領・首長、生徒会長、学級委員長、ガキ大将。この人たちは皆リーダーと呼ばれます。さて、ここで一つ疑問があります…。

リーダーとは何をする人でしょうか?

内山:「そう聞かれると…」

改めて聞かれると困りませんか?
「メンバーにあれこれ指示する人?」
「責任を取る人?」
「メンバーの間を調整する人?」

色々と答えは出るかもしれません。この答えでも間違いではないですが、これだけだとリーダーとしての役割は果たし切れていません。最も重要なことをやっていないからです。

内山:「最も重要なことって何ですか?」

まあ、答えを求めるのはちょっと待って下さい。一緒に考えていきましょう。まず、「リーダー」という言葉の意味ですが、これは英語です。英語でリーダーはどのように書きますか?

岡崎:「leaderだな」

そうです。そしてこの言葉ですが、2つに分けることが出来ます。「lead」と「er」です。まず「lead」を日本語にするとどういう意味になりますか?

内山:「えっと…『導く』ですかね?」

その通りです。「lead」は日本語にすると、「導く」という意味になります。では「er」の方は?

岡崎:「erは『〇〇する人』というときに付ける言葉だな」

そうなると「導く」と「人」でリーダーとは「導く人」という意味になります。この「導く」と言う言葉が重要です。では、リーダーはどこに導くのでしょうか?当然、どこかの「目的地」にです。もう何となく分かってきたかと思いますが、こうやって考えるとリーダーの仕事とは…

内山:「『目的地に(メンバーを)導くこと』」

そうです。つまり、「目的地はあそこだぞ!みんなあっちに向かって進むぞ!!」と言って皆を導くことがリーダーの仕事です。ということは、目的地も示さず右だ!左だ!」と言っているだけではリーダーの仕事はしていません。極端な話、目的地を示して皆を導くことだけをやっていればリーダーとしての仕事はしていることになります。逆に、「右だ!左だ」と指示して回ったり、自分でバタバタ動いたりしているだけだと、いくら働いるつもりでもリーダーとしての仕事はしていません。

岡崎:「どうしても、細かい指示を出しているとリーダーとしての仕事が出来ているように感じてしまうけど、そうじゃないってことだな」

内山:「方向を指し示すことがリーダーとして一番やらなければならないことなんですね」

第10章 リーダーとフォロワー

第9章では「リーダーの仕事」がテーマでしたが、今回はリーダーが仕事をするために必要な存在について書きたいと思います。

「フォロワー」という存在の重要性

リーダーの仕事は「メンバーを導くこと」と前回書きましたが、現実にはリーダーが「あっちだ!」って言うだけだとなかなか皆動いてくれないということがあります。よっぽど信頼があればいいのですが、それもなかなか難しいです…

岡崎:「分かる…」

内山:「リーダーは孤独なんだって感じてしまいますよね…」

そんな時は、もう一つ重要な役割を果たす人が必要です。それが「フォロワー」という存在です。ごちゃごちゃ説明するよりも、この映像を見て頂いた方が早いので、見て下さい。

出典:YouTube「TED」

見ましたか?見ることが出来ない方もいると思うので、この映像の中で何が起こっているのか解説します。

まず、一人の男が突然裸で踊り始めます。ここだけ見ると「ただのおかしな人」ですが、このおかしな人がリーダーです。
しばらくおかしな人が一人で踊り続けていると「二人目のおかしな人」が来ます。この二人目が重要です。この人が「フォロワー」です。おかしな人が2人に増えます。そしてしばらくすると…。

「三人目のおかしな人」が来ます。そしてこの辺りから事態が変わり始めます。踊りに参加する人が4人・5人と増え始めます。そして、最終的にどうなるかというと…。周りにいた全員が踊り出します。

この映像すごくないですか?実はこれ”TED”という番組である学者さんがプレゼンしていた映像ですが、結構衝撃的でした。

内山:「5人を超えたあたりから一気に流れが変わるのがすごいですね」

ちなみに一気に流れが変わるポイントのことを「クリティカルマス」と言います。日本語にすると臨界点とでも言えばいいでしょうか?

岡崎:「クリティカルマスに持っていくためにはフォロワーの力を借りる必要があるってことだな」

そうです。そして重要なことは「人を動かすにはリーダー+フォロワーが重要」ということと「リーダーはまずフォロワーを作れ」ということです。リーダーが全て頑張らなくてもいいんです。50人いるなら50人動かさなくてもいいんです。まずは、自分を理解してくれる人を1人2人動かすことが重要です。

内山:「なるほど、今まで全員を一度に動かそうと頑張っていたけど、フォロワーを1人か2人作ることがまずは大切なんですね」

岡崎:「組織の中ではリーダーが重要視されがちだけど、それと同じぐらいフォロワーの存在も重要視しないといけないな」


参考資料


ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則


ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則