最近、経営用語として「両利きの経営」という言葉が良く使われます。どこかで何となく見聞きしたことがある方も多いのではないでしょうか?今回の記事ではこの「両利きの経営」について理論的な背景も含めながら簡単に説明していきたいと思います。
両利きの経営とは何ぞや? ~イノベーションを起こすための経営手法~
では、まずは「両利きの経営とは何ぞや?」ということですが、ひとことで表すと「知の探索と深化を行いながらイノベーションを起こす経営」のことです。これだけだと、ちょっと分からない部分がありますね…。
何となく、「イノベーションを起こすための経営手法なんだな」ということは分かるかと思いますが、肝心の「知の探索・進化」の部分がいまいち分かりません。ということで、まずは「知の探索」「知の深化」とはどういうことなのかを解説していきます。
知の探索・知の深化 ~2種類の知の探り方~
イノベーションを起こすためにはその種となる知識やアイデアが必要ですが、これらの見つけ方には実は2つの方法があります。一つ目は「探索」もう一つは「深化」です。では、これら2つは何がどう違うのでしょうか?
知の探索 ~新しい知識を探し求める~
「知の探索」とは「新しい知識を探し求める行為」のことです。
例えば、アイデアを求めるときにネット記事や新聞・書籍を読んだり、「何か面白そうなものは無いかな?」と街を歩き回ってみたり、他者や他業種の人の話を聞いてみたりする行為が知の探索に当たります。そうやって新しい情報や知識を探していると、ときどきアイデアが浮かんでくることがありますよね?「〇〇という会社がやっていること、うちでも応用出来そうだな」とか「▲▲業界の取り組みを自分の業界にも持ち込めないか」といった感じです。これが、「知の探索」です。
ちなみに、このブログでも時折、特定の会社や業界の事例を連載記事として書いていますが、実は「知の探索に使ってもらえれば」という意図もあります。
知の深化 ~既存の知識を深掘りする~
一方、「知の深化」とは「既に持っている知識を深掘りする行為」のことです。
こちらも例を挙げると、今ある商品を改良したり、改善を行ったりする行為が該当するかと思います。今あるもののバージョンアップというイメージでとらえて貰えると分かり易いかもしれません。新事業や新商品を考えるときにはまずはこちらのアプローチでアイデアを考えることが多いのではないでしょうか?このように今あるものを深めていく行為が「知の深化」です。
「知の探索」と「知の深化」それぞれどのようなものかイメージはして頂けたでしょうか?
知の探索と知の深化のどちらが重要? ~どちらも重要視するのが「両利きの経営」~
さて、ここまで「知の探索」と「知の深化」について説明をしてきましたが、この2つの概念を理解するとこんな疑問が湧いて来るかもしれません。
「知の探索と知の深化どちらが重要なの?」
結論を言ってしまうと、「どちらも重要」です。どちらか一方だけだと、イノベーションはなかなか生まれないんですね。だからこそ、その2つを両立させる「両利きの経営」が近年重要視されています。
仮に知の探索のみを重視するとどうなるのかというと、アイデア止まり・思い付き止まりで実現性が無いプランが多く出てくる恐れがあります。ビジネスとは単にAという知識とBという知識を組み合わせるだけでは、なかなか上手くいかないことも多いです。そこで必要となるのが知の深化です。具体的には、知の探索で得た知識を応用するために、知の深化を行って今ある商品の改良などを行う必要があるわけです。「〇〇社がやっていることをうちの会社でも取り入れるためには、今の商品をどう変えていったらいいだろうか?」といった具合ですね。
一方、知の深化のみを行っていても不都合が発生します。何が起きるのかというと、どこかでアイデアが出尽くしてしまいます。「頑張って考えたのに、今までとあまり代り映えがしない」ということになりかねないということですね。それを防ぐためには時折、知の探索で得た知識を入れて新しい空気を入れてあげる必要があるわけです。
実は苦手な人が多いかもしれない「知の探索」 ~日本企業の課題点~
ちなみに、最後に少し余談ですが、日本企業は「知の深化は得意だけど、探索は苦手である」という意見もあったりします。今の商品を改良して性能などを高めることはすごく優れているけど、その一方で新しい価値を生み出すことは少ないということですね。このような意見、何となく同意できる部分も多いのではないでしょうか?そういう意味では、これからの日本企業には知の探索をいかに上手くやっていくかということが求められているのかもしれません。
(Toyama Suguru)
中小企業診断士事務所 マスタープランズ・コンサルティング代表
中小企業診断士。経営コンサルタントとして中小企業の経営コンサルティングを行っています。また、企業や商工会議所などでセミナー・講演会活動も行っています。著書:「小さな会社はまず何をすればいいの?~新米社長岡崎の10の物語~」
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