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【3M編】100年成功を続け、環境変化に対応していく企業

連載記事
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今回の連載記事のテーマは、世界的有名企業「3M(スリーエム)」です。スリーエムと言えば、「ポストイット」や「スコッチテープ(セロファンテープ)」を開発した企業として有名です。3Mは経営学の世界でもその企業文化・組織などが注目されており、3Mに関する書籍や研究も多く出されています。今回の連載記事ではそんな3Mについてお話ししていきたいと思います。

第1章 3Mってどんな会社? ~3Mの概要~

第1章では3Mがどのような会社なのかを簡単に説明していきたいと思います。

ポストイットで有名な3M

岡崎:「今回のテーマは3Mかぁ。世界的な超有名企業だな。俺たちも日常生活で結構お世話になってるな」

内山:「そうですね。会社名はあまり聞きなじみが無くても、3Mは僕たちが普段何気なくつかっているあの超有名な製品を開発した会社ですからね」

内山さんが言う超有名な製品とは、「ポストイット」です。皆さんの机の上や引き出しの中にも入っていることでしょう。ポストイットの開発秘話は有名な話なので、ご存じの方も多いかと思います。でも、実は3M他にも今や私たちの生活に欠かすことが出来ない製品を開発しています。

内山:「例えば何ですか?」

身近なところで行くと、「セロハンテープ」ですね。他にも塗装に使う「マスキングテープ」なんかも3Mが開発しました。

内山:「そうなんだぁ…知らなかった…」

岡崎:「まあ、セロテープやマスキングテープが世に出たのは100年近く前の話だからな」

内山:「え?3Mってそんな昔からあるんですか?」

3Mが設立されたのは1902年です。もう100年以上も前に出来た老舗企業です。

3Mの売上高と利益

ここで少し3Mの直近の業績にも触れておきましょう。

3Mの売上高ですが、2019年の売上高が321億ドル。営業利益は68億ドルで営業利益率は21.2%です。

内山:「売上高321億ドルってことは、日本円にするといくらになるんだろう?」

岡崎:「1ドル105円で計算すると、売上高は約3.37兆円。営業利益は7,140億円だな」

内山:「すごい数字ですね」

世界70か国に拠点があるグローバル企業ですからね。もちろん日本にも3Mジャパンという現地法人があります。ちなみに、2014年までは住友グループとの合弁で住友3Mという名前でしたが、今は3M本体の100%子会社になって3Mジャパンという名前になりました。

3Mの事業領域と製品

内山:「ところで、3Mってポストイット以外には何を作ってるんですか?3兆円以上も稼ぐってことはそれなりの事業をやっているんですよね?」

3Mの事業領域は大きく分けて4つです。

セーフティ&インダストリアル

工業、電力や道路・建築などに関わる分野がセーフティ&インダストリアルです。この事業領域では、研磨材、テープ・接着剤、電線用の収縮テープ、絶縁テープなどを扱っています。

トランスポーテーション&エレクトロニクス

自動車、電子部品、建設・建築などに関わる分野です。ここでは、塗装用のカップ、シーリング部品、防塵マスク、接着テープ、USBケーブル、フッ素液、ディスプレイフィルム、反射シート、業務用モップなどを扱っています。

コンシューマー

私たちに一番なじみがあるであろう生活用品に関わる分野です。冒頭で紹介したポストイットやスコッチテープ(セロテープ)、ラベルシール、スポンジ、両面テープなどを扱っています。ホームセンターで見かける3Mの製品は主にこの分野のものが多いです。

ヘルスケア

3Mは医療、食料分野にも進出しています。体温管理システム、医療用テープ、歯科用接着剤、バイオ医薬品製造で使われるフィルター、培養材などがヘルスケアの領域で扱っているものです。

3Mって何屋さんなの?

内山:「3Mの事業領域をざっと紹介してもらいましたけど、これを見ていたら事業領域が広すぎて何をやっている会社か分からなくなってきました…」

岡崎:「知れば知るほど何屋なのか分からなくなってくるよな…」

でしょうね…。実は3Mが何屋なのかよく分からないというのは結構聞く話だったりします。

岡崎:「そもそも、3Mの元々の社名からして何屋なのかよく分からないからな」

内山:「そうなんですか?」

現在の3Mの正式な社名は「3M Company」ですが、2002年までは正式には「ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチュアリング」という名前でした。

岡崎:「それぞれの単語の頭文字を取って3Mって呼ばれていたわけだな」

「ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチュアリング」という社名を直訳すると「ミネソタ州の鉱業と工業をやる会社」という意味になりますが、全く何をする会社なのか分からないですよね?

内山:「そうですね」

でも、1つ言えることは3Mは革新的な製品を開発し続け、その広い事業領域や商品群を武器に100年間成功し続けてきたということです。実は、その3Mの凄さを表すある経営学者の言葉があるんです。

「今後50年間、100年間、成功を続け、環境の変化に対応していく企業」

経営学の世界に「ビジョナリー・カンパニー」という本があります。超有名な本で、ビジネスの必読書には必ずと言っていいほど含まれている名著です。その著者のジェームズ・C・コリンズとジェリー・I・ポラスはその著書の中で、3Mをこう評価しています。

”今後50年間、100年間、成功を続け、環境の変化に対応していく企業を1社だけ選べといわれれば、わたしたちは3Mを選ぶだろう” 「ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則」ジム・コリンズ ジェリー・ポラス著 日経BP出版センター 

ビジョナリー・カンパニーの中で研究対象になっている企業は、ボーイング、ディズニー、ソニー、GE、P&G、ジョンソンエンドジョンソン、IBMなどです。

岡崎:「世界的超有名・優良企業ばかりだよな」

そう。その中でも、著者は3Mがこれからも成功する可能性が一番高いと言っているわけです。

内山:「何かすごい会社ですね。段々興味が湧いてきました」

でも、今では100年成功を続けるという評価をされている3Mですが、実はスタートの段階ではそこまでの会社ではありませんでした。むしろ「来年は存在しているのか?」と思われるくらいの状態でした…

第2章 設立早々事業に失敗? ~3Mの歴史~

第1章では3Mの会社概要について知ってもらいましたが、もう少し3Mのことを知ってもらうために第2章では3Mの歴史について触れていきたいと思います。

設立早々事業に失敗

第1章でも説明しましたが、3Mの設立は1902年。設立当初の事業はミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチュアリングという社名が表す通り、鉱業でした。

内山:「鉱業といっても色々とありますよね?具体的には何を採掘していたんですか?」

具体的には、サンドペーパーに使う原料の採掘をやっていました。でも、この採掘事業は失敗に終わります。頑張って鉱物を探して採掘したものの、それが売れず、倒産一歩手前に近い状態になってしまったわけです。

岡崎:「設立早々に躓いたわけだな…」

何とかして会社を続けたい3Mの創業メンバーはその後、何でもいいから会社が生き残れる事業を模索します。そして、見つけ出したのがサンドペーパーと砥石車の製造です。ここから「マニュファクチャリング」がメインの事業となります。

内山:「ここから3Mの快進撃が始まるわけですね!」

…の予定でしたが、そう話は上手くいきませんでした…。

順調にはいかない研磨材事業

会社の生き残りをかけて取り組んだ研磨材事業だが、なかなか上手くはいきませんでした。品質が悪くて製品が売れず、資金繰りに苦しむことになります。

岡崎:「踏んだり蹴ったりだな…」

「スリーエム・アイト」による成功

とはいっても、会社は続けたい3Mの人たち。何とか売れるものをということで、日々製品開発を続けます。そして創業から12年後の1914年。遂に3Mを救う製品が登場します。その名も「スリーエム・アイト」

内山:「『スリーエム・アイト』って何ですか?」

研磨用の布です。スリーエム・ライトを販売したところこれがヒット。ようやく利益が出せるようになります。

岡崎:「会社を作ってから10年以上も苦労したのか…。3Mにもそんな時代があったんだな…」

次々と新製品をリリース

スリーエム・ライトの成功で勢いに乗った3Mは、その後次々と新製品をリリースします。

1921年には耐水研磨剤、1925年には自動車塗装に革新をもたらした「マスキングテープ」。1930年には「セロハンテープ」をリリースします。

そして、1980年にはその開発秘話とともに後に語り継がれることとなる伝説的な商品が生まれます。

内山:「ポストイットですね」

失敗作から生まれたポストイット

ポストイットの開発秘話は有名な話なので知っている方も多いですが、簡単にもう一度振り返っておきます。

もともとポストイットというものは「貼り付け可能な付箋紙」を作ろうとして作られたものではありません。失敗作の接着剤から生まれた偶然の産物です。詳しい話は3Mのホームページに載っているので、詳しいことを知りたい方はこちらをどうぞ。

ポスト・イット® ブランド│ポスト・イット® ブランドについて
ポスト・イット® 製品に関するお問い合わせはこちらです。

岡崎:「だけどさぁ、ポストイットの話って普通は『失敗作の接着剤を作ってしまいました』で話が終わるよな」

内山:「それを何とか製品化しようとするところが普通と違いますよね」

そして、その製品を事業としてしまうところも普通では無いですね。まあ、こうやってちょっとしたアイデアや失敗も大切にして製品化・事業化してしまうところが3Mの凄いところなわけですけど。

岡崎:「何でそんなことが出来るんだろうな?」

その当りの秘密についても後々今回の連載記事の中で触れていきたいと思います。

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第3章 「馬券は流しで買う」戦略 ~3Mの事業領域が広い理由~

ここまで3Mの概要と歴史について話をしてきましたが、3Mという会社について興味は湧きましたか?

内山:「ポストイットみたいな製品を次々とリリースすることが出来る会社ってどんな組織になっているんだろう?ってことが気になりますね」

岡崎:「あと、基本的にどんな戦略を取っているのかも気になるな」

では第3章では3Mの基本戦略について考えていきましょう。

「流しで馬券を買う」戦略

ところで、突然ですが、岡崎さんは競馬ってやりますか?

岡崎:「何だよ藪から棒に。GⅠとか大きなレースの時はたまにやるよ」

じゃあ、馬券を買うときはどんな買い方をしますか?

岡崎:「そうだなぁ…。まずは軸馬を決めて、その後はそこから流しでいくつか買うかな…」

なるほど。でも、1点買いの方がギャンブルとしてロマンはあると思うんですけど、どうですか?

岡崎:「確かにロマンはあるかもしれないけど、1点買いだとリスクもあるだろ?だから、流し買いしてるんだよ」

じゃあ、岡崎さんの馬券の買い方は3Mの基本戦略と同じですね。3Mも基本的には「流しで馬券を買う」という戦略で事業を行っています。

1つのカゴに卵を全部入れない

経営や投資の世界では「1つのカゴに卵を全部入れない」という考え方があります。1つのカゴに全ての卵を入れてしまうと、カゴを落としたときに全部の卵が駄目になってしまう。だから、卵を複数のカゴに分散させて万が一のリスクに備えるという考え方です。

専門用語でこのことを「ポートフォリオ」と言いますが、3Mも基本的にはこの考え方に従って事業を行っています。3M成功の立役者ウイリアム・マックナイト氏はこう言っています。

”設立の当初(鉱業で失敗したとき)、当社ではタマゴをすべて、ひとつのカゴに入れていた。…製品を多角化すれば…競争の激化で製品のすべてが打撃を受けるとは考えにくいし、いつでも、事業のうち少なくとも一部は、収益が上がるだろう” 「ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則」ジム・コリンズ ジェリー・ポラス著 日経BP出版センター 

第2章で説明したように設立当初の3Mは研磨材の採掘という事業を1点買いしてしまったことで、失敗をしました。

内山:「で、その経験から3Mは1点買いは止めて、流し買いをする方向に戦略を変えたわけ
ですね」

そういうことです。だから、3Mは事業の種類が多いんです。

多角化しても軸はある

岡崎:「要するに3Mは『多角化戦略』を取ってるってことだよな?」

そうです。

岡崎:「だったら、素直に『多角化戦略』って言えばいいのに、何でお前は『流しで馬券を買う』って言ってるんだ?」

それは、3Mは「軸」を持った上で事業を広げているということを強調したかったからです。多角化戦略というのは結構幅が広い概念で、本業と全く関係の無い分野で事業を行うことも多角化戦略に含まれます。

例えば、製造業をやっている会社が儲かりそうだからと突然ラーメン屋を始めてもそれは多角化です。でも、3Mの多角化戦略はそうではありません。3Mのロゴに「Science.Applied to Life.」とあるように科学を軸にして多角化をしていますし、他にも理念やビジョン・行動規範といった軸をしっかりと持った上で多角化をしています。

多角化をすると方向性がブレブレになって、結果的に上手くいかなくなる会社もあるんですが、3Mは軸がしっかりしているので、そういうことなく経営を続けられています。

競馬もそうですよね?流し買いで馬券を当てる人はしっかりと軸馬を決めてから買っていますよね?

それと同じように「3Mはしっかりとした軸をもった上で多角化戦略を取っている」ということを伝えたかったので、今回は一般的に使われている「多角化戦略」と言わずに、敢えて「流しで馬券を買う」と表現しました。

岡崎:「なるほど。そういうことか」

参考資料


ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則

3M ジャパン 公式WEBサイト
3M 公式WEBサイト(英語)
3M 2019 Investor Overview(英語)
3M 2020 Sustainability Report(英語)