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在庫と利益の関係 ~在庫が増えたら利益も増える?~

けいなび研修
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「在庫を使って粉飾決算」。時折こんな話題がニュースで流れます。でも、どうしてこのようなことが出来るのでしょうか?
今回の記事では会計上の在庫と利益の関係について学んでいきたいと思います。

会計上の在庫の表し方

まずは会計上、在庫は決算書にどのように記載されているのかを知っておきましょう。
決算書を見ればどれくらいの在庫を抱えているのかが分かりますが、分かり易く「在庫〇〇円」とは書いてありません。

決算書上では在庫は「棚卸〇〇」と記載されています。期末や月末など節目の時期になると行うあの「棚卸し」です。

ちなみに余談ですが、棚卸しで何をしているのかというと、棚卸しを行った時点で保有している在庫の数を確定させています。会計に関りのない方からすれば、ただただ面倒な作業ではありますが、これから説明するように会社の利益に関わってくる超重要な行為なのです。

在庫が増えると利益が増えるという謎の現象

さて、ここからが今回の本題です。冒頭で「在庫を使って粉飾決算」と言いましたが、具体的には何をしているのでしょうか?

答えは、在庫を多く計上して利益を増やしています。

そうです、在庫を多く計上するだけで利益が増えてしまうのです。なぜこんなことが出来てしまうのでしょうか?詳しく解説していきます。


売上原価の計算式を見れば利益が増えるからくりが分かる

在庫が増えると利益も増えるからくりは売上原価の計算式が分かれば理解が出来ます。売上原価とは商品の仕入れや生産に掛かる費用のことで、売上高から売上原価を引けば売上総利益という利益が算出出来ます。

では、この売上原価はどのように計算するかというと、「期首棚卸高+仕入費用等-期末棚卸高」という計算式で計算します。期首棚卸高とは月や年度の最初の在庫額のことです、そして、期末棚卸高とは月や年度の最終日に残っている在庫額のことです。具体例で説明をすると、期首在庫が10万円、仕入費用が40万円、期末在庫が5万円だった場合の売上原価は10万円+40万円-5万円=45万円になりますが、期末在庫が20万円に増えると、売上原価は10万円+40万円-20万円=30万円になります。費用が15万円減ったので、その分利益は増えることになりますよね?このような仕組みになっているため、在庫が増えると会計上の利益は増えるわけです。

からくり自体は意外とシンプルですよね?

在庫を増やして利益を水増しすると後で痛い目に…

さて、このような在庫と利益の関係を悪用するとこんなことも出来ます。

A社は今期赤字の見込みです、でも体裁を考えると利益が出たことにしたい。だけど、帳簿の数字を架空計上することは嘘をつくことになるので、出来ない。そこで、A社は期末にたくさんの製品を生産して期末棚卸高を増やして利益が出るようにしました。確かにこうすれば利益は出るかもしれませんが、後で痛い目を見ることになります。

特に過大な在庫はキャッシュフロー・資金繰りの悪化を招くことになるので、利益を出さなければいけない場合はこのような小手先の手段に頼るのではなく、健全な方法で利益を出していきましょう。