前回の第1回目ではマーケティングの基本となるSTP分析について説明をしましたが、今回はSTP分析の中の「セグメンテーション」についてもう少し掘り下げてみます。
なぜセグメンテーションが必要なのか?
まず最初になぜセグメンテーションが必要なのか、その目的について説明していきたいと思います。セグメンテーションを行う一番の理由は「ターゲットとなる顧客を絞り込むため」です。世の中には様々な人がいて、人それぞれニーズが違うため、どんなに良い商品やサービスでも万人に好まれるものはありません。ですので、ターゲットの絞り込みを行わずに商品やサービスを売ろうとすると、結局誰にも響かずに誰にも買ってもらえないという状況になりかねません。せっかくいい商品やサービスを開発したから出来るだけ多くの人に使ってもらいたいという気持ちは分かりますが、これが現実です。
ですので、マーケティングではターゲットとなる顧客を絞り込むことを重要視します。そして、その絞り込みのためにセグメンテーションということを行います。
セグメンテーションにはもう一つ目的があります。それが「有望な市場の見落としを防ぐこと」です。実際にセグメンテーションをやってもらえれば分かると思いますが、セグメンテーションを行うと、客観的に市場を見ることが出来るようになり、「こんな市場があったんだ!」ということに気が付くことがあります。
思い入れが強い商品やサービスを売ろうとするときほど、「こういう人をターゲットにする」「こういう人に喜ばれるはずだ」という思い込みや先入観が先走ってしまい、実は他に有望な市場があるのに、それに気が付かないままビジネスを行ってしますことが多々あります。
これを防ぐためにも、一度セグメンテーションを行うことで自分の頭の中を整理するということは重要です。
セグメンテーションの手順
では、セグメンテーションの目的を理解して頂いたところで、セグメンテーションの具体的な手順を説明していきます。
STEP1 軸を決める
まずは市場の絞り込みを行うための基準となる軸を決めましょう。「年齢と性別」や「居住地域と職業」といったように2つの軸で絞り込むことが多いです。軸は2つ以上でも良いですが、その場合は「年齢と性別」で絞ったセグメントを「居住地域と職業」でさらに絞り込むといった具合に2段階で行うと良いでしょう。
STEP2 マトリックスを作る
軸が決まったらマトリックス図を書いてみましょう。マトリックス図を作ると俯瞰的に市場を見ることが出来るようになるのでお勧めです。ちなみに、マトリックス図で分けられた各ブロックのことを「セグメント」と呼びますが、マトリックスを作ったらついでに各セグメントに名前を付けておくと後々便利です。
STEP3 市場性の評価
マトリックス図を書いてセグメントが分けられたら、各セグメントの市場性を評価していきましょう。市場性の評価を怠ると後々「有望な市場だと思ったのに…」と残念な思いをすることになるので、市場性の評価はしっかりとやっておきましょう。
この時、4Rという基準を使うと良いとされています。4Rとは次のようなものです。
Rank(優先順位・重要度)
セグメントの重要度のことです。自社の能力や戦略と照らし合わせて決めましょう。
Realistic(有効規模)
市場の規模や成長性のことです。統計資料や市場のレポートなどを参考にしながら調査をします。
Reach(到達可能性)
対象となる市場へのアクセスの難易度です。例えば、既に自社が持っている販路を使って新しいセグメントの顧客にも商品やサービスを販売出来る場合は到達可能性が高いと判断が出来ます。逆に一から販路を作らないといけない場合や、強力な競合他社が販路を抑えてしまっている場合は到達可能性は低いと判断します。
Response(測定可能性)
セグメントの反応やマーケティング施策の効果を図ることが出来るかどうかです。例えば、SNSユーザーはSNSのデータを分析することで反応を調査しやすいので、測定可能性が高いということが出来ます。
これらすべてを検証することは難しいですが、せめて市場規模と到達可能性の検討はしておいた方が良いでしょう。
セグメンテーションの軸の決め方
セグメンテーションを行う際に悩むのは軸の決め方です。ですので、最後に軸の決め方についても解説をしておきます。セグメンテーションの軸は次の4つの切り口で決められることが多いです。
地理的変数(ジオグラフィック変数)
国や地域、都市などターゲットのニーズに影響を及ぼす「地理的要因」を切り口とする考え方です。例えば、「関東地方に住んでいる人」や「人口20万人以上の都市部に住んでいる人」といった場合は地理的変数に基づいて軸を決めていると言うことが出来ます。統計資料を使って市場規模などの調査が行い易いので広く用いられています。
地理的変数の例
国、地域、都市、気候、文化、生活習慣、宗教など
人口動態変数(デモグラフィック変数)
地理的変数と並んで人口動態変数もよく使われます。これは年齢や性別、職業、所得などの「個人の属性」を切り口に軸を決めていく考え方です。例えば、「20代の女性」や「年収〇〇円以上の会社員」といった場合は人口動態変数に基づいて軸を決めています。こちらも地理的変数と同じように情報が集めやすいのでよく使われます。
人口動態変数の例
年齢、性別、職業、所得、学歴、家族構成など
心理的変数(サイコグラフィック変数)
価値観や趣味嗜好、ライフスタイルといった「感性や考え方などの心理的要素」を切り口とします。例えば、「食の安全性に関心がある人」や「環境問題を気にしている人」「ブランド志向」などといった軸は心理的変数に基づいています。顧客ニーズの多様化に伴って重視されるようになっていますが、地理的変数や人口動態変数に比べて情報調査がしづらいのが難点です。
心理的変数の例
価値観、趣味嗜好、興味関心、ライフスタイル
行動変数
「顧客の行動パターン」に基づいた切り口を行動変数といいます。例えば、「ネット通販利用者」「購入時間帯」などです。ネット販売などが普及してきたことによって行動の測定が容易になったので、心理変数とともに重視されています。今後様々なデータが入手出来るようになるとより使用されるようになるでしょう。
行動変数の例
曜日・時間帯、購買経路、頻度など
軸の決め方に正解は無いので、様々な軸を試して色々なパターンでセグメンテーションを行うと今までとは違った気付きがあるかもしれません。
(Toyama Suguru)
中小企業診断士事務所 マスタープランズ・コンサルティング代表
中小企業診断士。経営コンサルタントとして中小企業の経営コンサルティングを行っています。また、企業や商工会議所などでセミナー・講演会活動も行っています。著書:「小さな会社はまず何をすればいいの?~新米社長岡崎の10の物語~」
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