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【コミュニケーション編】 コミュニケーションの方程式 ~上手なコミュニケーションを行うための秘訣~(全4章)

連載記事
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※本記事は2015年5月から7月までメルマガで配信した記事の内容を再構成したものです。

第1章 コミュニケーションの方程式って何? ~コミュニケーションを成り立たせる2つの要素~

コミュニケーション編では世代や文化が違っても上手にコミュニケーションを成り立たせるための秘訣について書いていきます。「人に上手く話を説明することが出来ない」や「コミュニケーションで誤解が生じることがある」といったことに困っている方向けの内容となっていますので、このようなことに困っている方は是非ご覧ください。

コミュニケーションの方程式って何?

岡崎:「いきなりだけど、タイトルにある『コミュニケーションの方程式』って何だ?」

「コミュニケーション」=「コンテンツ」×「コンテクスト」
これが、コミュニケーションの方程式です。

内山:「いや、それだけじゃよく分からないです…」

それもそうですね。いきなり、数式書かれてもよく分からないですよね…。では、まずは言葉の説明から始めましょう。

コンテンツ(Contents)

「コンテンツ」は日本語にすると「内容・中身」という意味です。ここでは「話や指示の内容そのもの(伝えたいこと)」と定義しておきます。よく「○○のコンテンツ」とかいう形で使われるので、聞き覚えのある方も多いかと思います。

コンテクスト(Context)

これは日本語にすると「文脈」という意味です。「話をするに至った背景、経緯、理由」とでも定義しておきましょう。

岡崎:「言葉の意味は何となく分かった。コンテンツとコンテクストの違いだけど、それぞれ『言葉や文字として具体的に現れるメッセージ』『言葉や文字として具体的に現れないメッセージ』って解釈してもいいかな?」

そうですね。そのように解釈してもらった方がイメージがしやすいかもしれません。では、続いて数式の説明をします。

「コミュニケーション」=「コンテンツ」×「コンテクスト」

この方程式は、「コミュニケーションが上手くいくかどうか(上手く伝わるか)は「コンテンツ」と「コンテクスト」の2つの要素で決まる」ということを表しています。

内山:「コミュニケーションが上手くいかないのは『コンテンツ』か『コンテクスト』のどちらか、もしくは両方に問題があるからということですか?」

そうです。コミュニケーションが上手くいかない場合は、「コンテンツ」と「コンテクスト」の2つの要素に分けて、それぞれに問題が無いかを考えていきましょうということが、コミュニケーションの方程式で言いたいことです。

コンテクストがコミュニケーションの問題を引き起こす

さて、「コミュニケーションが上手くいかないのは「コンテンツ」か「コンテクスト」のどちらか(もしくは両方)に
問題があるから」と書きましたが、コミュニケーションの問題を引き起こす原因は大抵の場合「コンテクスト」です。

「言ったことが理解されない」
「従業員が指示したことと違うことする」
「何か誤解されている」

といった症状が出ている場合は、大抵「コンテクスト」が悪さをしています。

岡崎:「ということは、コミュニケーションの行き違いで従業員の教育や指示の問題に悩むのも…」

内山:「クレームが発生するのも…」

岡崎:「異文化の対立が発生するのも…」

内山:「昨日奥さんとケンカをしてしまったのも…。全部コンテクストが原因ってことですか?

いや、奥さんとのケンカはどうか知りませんが…。いずれにせよコミュニケーションの問題は「コンテクスト」の部分に端を発することが多いので、今回のシリーズでは「コンテクスト」の部分に注目して話を展開していきたいと思います。


第2章 日本人のコミュニケーション ~日本型のコミュニケーションを理解する~

第1章でコミュニケーションはコンテンツとコンテクストの2つの要素で行われると説明しましたが、この2つのどちらに重きをおくかでコミュニケーションの形は変わってきます。

岡崎:「欧米型のコミュニケーションと日本型のコミュニケーションにその違いがよく現れているので、この2つを例に説明していきます」

欧米型のコミュニケーションと日本型のコミュニケーション

欧米型のコミュニケーション

欧米型のコミュニケーションでは、とにかく細かいことでも言葉や文章で説明したりします。契約書がいい例で、日本では数枚で済むことを何枚も紙に書いてきます。

口頭で話をしていても、彼らは細かいことでも「それはどういうことだ?なぜだ?どういう意味だ?」といったようなことを聞いてきます。日本人の感覚からすると、面倒だと感じることもありますが、彼らは別に悪気があってこのようなことをしているのではなくてこれが彼らのコミュニケーションのスタイルなのです。

では、なぜこんなことをするかというと、彼らがコンテンツ重視のコミュニケーション文化で育っているからです。

どういうことかというと、欧米では国や民族、宗教や習慣などの違いにより人々の考え方や価値観が多種多様なので「言葉に表さないメッセージ」は伝わりません。「コンテクストが共有されていない(伝わっていない)」状況です。

内山:「コンテクストが共有されていないから、コンテンツを重視したコミュニケーションを取るんですね」

これを『ローコンテクスト文化』と言います。ローコンテクスト文化では、コンテクストに頼ったコミュニケーションが取れないので、その分、コンテンツを細かく説明(コンテンツ重視)していかないといけません。コンテンツ>コンテクストという関係です。

日本型のコミュニケーション

一方、日本型のコミュニケーションでは、あまり細かいことを言ったり、文章化したりはしません。日本人は「言わなくても分かるだろ?」とか「場の空気を読んで…」と言った形のコミュニケーションを取り、必要以上に細かい説明をすると嫌がられます。

これは、日本人がほぼ同じ価値観や考え方をしているという前提に立っているためです。言い換えれば、「コンテクストが共有されている(伝わっている)」状況です。

岡崎:「日本人はコンテクストを重視したコミュニケーションを取るってことだな」

これを『ハイコンテクスト文化』と言います。だから、日本人はコンテクスト重視です。コンテンツ<コンテクストという関係です。

ローコンテクスト文化vsハイコンテクスト文化

さて、上で説明したコミュニケーション文化ですが、これが同一文化内でのコミュニケーションであれば問題はありません。ところが、ローコンテクスト文化とハイコンテクスト文化間でのコミュニケーションとなると、問題が発生してくることがあります。

一昔前の英語の教科書にあったような「外国人が家に遊びに来た時に、土足で家に上がって…」といったような話です。これは、日本人からすれば「靴脱ぐのが当然だろ、そんなこと言わなくても分かるだろ」と思っていますが、外国人は「そういう習慣なら事前に言ってくれよ、言わなきゃ分からねーだろうが」ということになります。

少し余談ですが、私が思うに日本人はコンテクストが共有されていることが当然だと思っているところがどこかあるので、歴史的にも時々問題を起こしています。

例えば、鎌倉時代の元寇のときに、日本の武士が戦闘の前に元軍の前に単騎で登場して、「やあやあ、我こそは…」と言って名乗りを上げたら、いきなり元側から”てつはう”(爆弾のようなもの)を投げつけられて大混乱になった。といった有名なエピソードがありますが、これも日本側が「戦とは、武将同士が互いに名乗りあってから始めるものである」というコンテクストを元側も共有していると勝手に思い込んでいたから発生した出来事です。

岡崎:「だけどこれ、元側からすれば『あいつ何やってんだ?』って感じで、別に無礼でも卑怯でも何でもないよな」

内山:「元寇の話は昔のことだから仕方ないですけど、異文化の人も僕たちのコンテクストを共有してるって思ったらだめですね」

日本人のコミュニケーションの特徴と問題点

さて、日本人のコミュニケーションの特徴と問題点何となく分かって頂けましたか?

日本人はコミュニケーションを取るときに「コンテクスト重視のコミュニケーションを取る」という特徴があります。日本人の『和』とか『思いやり』とかは、この特徴がバックボーンになっているので、これ自体は問題は無いです。

岡崎:「コンテクストを大切にするっていうことが日本人の良さでもあるよな」

ただ、問題なのはコンテクスト重視のコミュニケーションが当たり前になっているので、
「自分のコンテクストを相手も共有しているという前提でコミュニケーションを取ろうとする」
「コンテクストが違う可能性を認識していない」
という点です。

恐らく、数十年前ならこのことは大して問題になってこなかったかもしれません。ところがここ最近、そしてこれからはこの点が結構大きな問題になってきます。

内山:「大きな問題とは何ですか?」

では、具体的に何が起こっているのか?対応としてどうすればいいのかを次で説明します。


第3章 コミュニケーションの形の変化 ~ハイコンテスト文化からローコンテクスト文化への移行~

第3章テーマは、日本人のコミュニケーションの形の変化についてです。

内山:「コミュニケーションの形の変化って、何がどう変化しているんですか?」

「言わなくても分かる」が成り立たない?

では、どう変化しているのか?結論から言ってしまうと、ハイコンテクスト文化からローコンテクスト文化に移行しています。言い換えると、「言わなくても分かるだろ?」といったコミュニケーション文化が成立しなくなっているということです。

分かりやすい例を言うと世代間の違いです。今40代の方が「当たり前」だと思っていることが、20代の人には「当たり前じゃない」ということが結構あります。

岡崎:「おじさんの俺にはよく分かるぞ!」

例えば、40代の人が「酒の席で目上の人にお酒を注いで周るのは当たり前」と思っていても、20代の人は「え?何でそんなことするんですか???」といった感じだったりします。

なぜこのような現象が発生するのかというと、世代間でのコンテクストの共有が出来ていないからです。別に20代の人たちは悪気があってお酌をしないわけではないです。前回お話しした靴を脱がない外国人と同じです。

内山:「だけど、何でコンテクストが共有されないんですかねぇ…」

コンテクストが共有されない理由

なぜコンテクストが共有されないのかというと、育ってきた環境が違うからです。

同じような環境で育ってくれば、同じような考え方や価値観、経験をするので特に意識をしなくても、コンテクストは自然と共有されていきます。一方、環境が違えば違う考え方や価値観、経験をするので、コンテクストは共有されません。

岡崎:「そう考えると世代間や男性と女性では育ってきた環境が違うので、コンテクストの共有が出来ていない部分が発生して、コミュニケーションが上手くいかないことがあるのは、当然と言えば当然だな」

まあ、こんなことは多少なりとも昔からあるわけで、昔から「最近の若いもんは!!」って言ったり、「女(男)はよく分からん!」とか言ったりしているわけです。しかし、なんだかんだ言いながらも根っこの部分ではある程度のコンテクストを共有出来ていたので、最初はケンカしても最終的にはそれなりにコミュニケーションは上手くいっていたわけです。

ハイコンテクストからローコンテクストへの移行とその理由

ところが、これからはそうではないケースが発生する可能性があります。

コンテクストの共有の問題は昔からあったわけですが、昔はそれなりにコンテクストの共有の幅が大きかったので、最初は上手くコミュニケーションが取れなくても、根本の部分は分かっているので、放っておいても最終的にはそれなりに上手くいきました。ところが、これからは昔と比べて共有しているコンテクストが減ってきます。つまり、これまでのようにハイコンテクスト型のコミュニケーションが成り立たなくなってくるわけです。

岡崎:「だけど、何で昔はハイコンテクストだったものがローコンテクストに変わって来ているんだ?」

その答えを考えるためのキーワードは「多様化」です。そもそも日本はこの多様化という概念と縁遠い文化圏ですが、それが近年変わってきました。

内山:「何が起きたんですか?」

その要因として考えられるのは…

情報へのアクセス権を獲得した

小難しい言い回しをしてますが「昔よりも多くて多様な情報を獲得出来るようになった」ということです。

岡崎:「インターネットとかを使えるようになったことで今まで知らないことを知ることが出来るようになった。ってことか?」

そうです。そして、獲得出来る情報の量が増えたので、今までは「そんなもんか」で納得してたのが、「あれ?おかしくないか?」みたいなことを考える人や場面が増えてきたということです。

多様化を許容する文化や雰囲気が出来た

これはインターネットの登場よりももっと前から進行していたと思うのですが、多様性や個性を認める文化が日本でも出来ました。それまでは「皆と同じ」を重視して、人と違うことをすることは敬遠される雰囲気がありましたが、「個性を伸ばす」とか「その人らしさ」みたいなことが許容されるようになってきました。

この文化が無いといくらインターネットとかで情報を仕入れて、今自分がいるコミュニティーと違う考え方や価値観があることを知っても、村八分になることを恐れてコンテクストを共有し同化することになります。ところが、多様化が許容されれば、無理やりコンテクストを共有する必要が無くなるので、コンテクストの共有の幅は少なくなります。

このような社会の変化がローコンテクストに移行する理由ではないかと考えています。

内山:「なるほど、こういった社会の変化がコミュニケーションのあり方にも影響を与えているわけですね」


第4章 コンテンツを強化する ~コミュニケーションの変化にどう対応する?~

今回のテーマはハイコンテクストのコミュニケーションからローコンテクストのコミュニケーションに移行するための課題と対策についてです。

ローコンテクストのコミュニケーションに移行するための課題

さて、前回日本人のコミュニケーションの形はハイコンテクストからローコンテクストに移行していると書きましたが、ローコンテクストのコミュニケーションを行うためには何が必要でしょうか?

内山:「うーん。何だろう???」

それを考えていくために、まずは第1回で説明したコミュニケーションの方程式を思い出してみましょう。

岡崎:「コミュニケーションの方程式は『コミュニケーション=コンテンツ×コンテクスト』だったな」

この式を使うとハイコンテクストのコミュニケーションは、「コミュニケーション=コンテンツ(小)×コンテクスト(大)」と表すことが出来ます。

そして、コミュニケーションの形がハイコンテクストからローコンテクストに移行するとコンテンツとコンテクストの関係は、「コミュニケーション=コンテンツ(小)×コンテクスト(小)」となります。

岡崎:「コンテクストが共有されなくなって、コンテクストへの依存が出来なくなるからこうなるな」

そうです。今まではコンテンツの力が弱いのをコンテクストの力で補ってきたのですが、これからはこれが成り立たなくなります。

内山:「今までのようにコンテンツの弱さをコンテクストで補うことが出来なくなるということですね」

はい。そうなってくると、上手にコミュニケーションを取れるようになるためには何が必要でしょうか?

内山:「コンテンツの力を高めないといけないですね。だけど、何をすればコンテンツの力を高められるんだろ?」

コンテクストを言語化する

第1回目でコンテンツとは「言葉や文字として具体的に現れるメッセージ」、コンテクストとは「言葉や文字として具体的に現れないメッセージ」と説明しました。このことから考えると、コンテンツの力を高めるためには…

内山:「コンテクストとして言葉に表していなかったことを、具体的な言葉に表すようにすれば良いんだろ?」

そうです。つまりは、「コンテクストの言語化」です。

内山:「なるほど。だけど、コンテクストの言語化って具体的には何をすればいいんですか?」

まずは、自分が伝えたいと思っていることや考えていることをメモ書き程度でいいので文章に書いてみることをお勧めします。そうすると、「あれ?上手く相手に伝えるためには、このことも言わないといけないよな」とか「前提として、あのことを説明しておかないといけないよな」ということに気が付くと思います。そういった気付きを一つ一つ言葉にしていくことがコンテクストを言語化するための第一歩です。

相手を知ることも大切

あとは、コミュニケーションを取る相手の「人となりを良く知る」ということも重要です。コンテクストというものはその人が経験したことや環境によって形成されるので、相手を良く知って自分と相手の違いを認識することで、どこまで相手とコンテクストが共有出来ていてどこからが共有出来ていないのかが分かるようになります。

岡崎:「相手のことを知ったうえでコンテクストを言語化すればより良いものが出来上がるな」

内山:「これからの時代は『人それぞれコンテクストが違う』という前提に立ってコミュニケーションを取っていくことが大切ですね」