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コンコルド効果・サンクコスト 合理的な意思決定を阻む「もったいない」という心理

けいなび研修
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皆さんは「コンコルド効果」というものをご存じでしょうか?有名な音速飛行機のコンコルドに由来する言葉です。今回の記事では、この「コンコルド効果」について解説していきます。

失敗に終わったコンコルド

夢の旅客機コンコルド

コンコルドと言えば1970年代に登場した超音速旅客機です。有名な飛行機なので、乗り物や飛行機好きでなくても名前ぐらいは聞いたことがあると思います。コンコルドはマッハ2.0で飛ぶことが出来るロマンあふれる夢の飛行機でした。日本でも日本航空が導入を計画したこともあるそうです。

大赤字を出したコンコルド事業

そんな夢の飛行機コンコルドですが、ロマンはあっても経済性はありませんでした。ロマンと引き換えに燃費が悪い、騒音が悪い、航続距離が短い、100人しか乗れない、などの問題があったのです。なので、最初は興味を示した各国の大手航空会社も「やっぱ止めよう…」と注文を次々とキャンセル。その結果、販売数が予定を大きく下回り大赤字をだすことになってしまいました。

なぜコンコルドは大赤字を出すことになったのか?

実はコンコルドに経済性が無いこと、そして、事業として成功の可能性が低いということは開発時点から分かっていることでした。では、なぜそのことが分かっていながら大赤字を出すまで開発を継続してしまったのか?ここからが今回の本題です。

開発を継続した理由。それは、「もったいない」「折角ここまでやってきたのに…」という心理が働いてしまったからです。「これまで莫大な開発費を投資してきたから」「多くの時間と労力を使ったから」ということに囚われて開発を止めることが出来なかったこと。これがコンコルドが大赤字を出すことになった原因です。開発側の立場に立てば、それまでの自分たちがやってきたこと、費やした費用に対する思い入れもあるでしょうから、そうやすやすと開発を止めることは出来ないとは思いますが、冷静に考えてみると過去に使ったお金や労力・時間はもう取り戻すことが出来ないものです。支払ったお金は返ってこないですし、時間は戻ってきません。

このように既に払ってしまって、取り戻すことが出来ないお金や労力などを専門用語で「サンクコスト(Sunkcost)」と言います。サンク(Sunk)は「沈んだ」と言う意味なので、日本語では「埋没費用」と訳されます。そしてそのサンクコストに囚われてしまう心理傾向をコンコルドの事例から「コンコルド効果」と呼びます。

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実は私たちもやらかしてる?身近にもあるサンクコストとコンコルド効果の例

このサンクコストとコンコルド効果ですが、私たちの身近にも多く潜んでいます。そして、私たちはコンコルド効果の影響でついつい間違った意思決定をしてしまいがちです。いくつか例を見ていきましょう。

飲食店での順番待ち

サンクコストとコンコルド効果の説明によく使われるのが飲食店での順番待ちの例です。

例えば、皆さんが外に食事に出かけたとします。お店に入ると他のお客さんが席が空くのを待っています。「まあ、少し待っていれば空くだろう」と自分もその順番待ちに加わり、席が空くのを待つことにします。しかし、そのお店は回転が悪く待てど暮らせど順番が来ません。こんなとき皆さんならどうしますか?

ついつい、「折角待ったんだから…」と我慢して順番待ちを続けてしまいませんか?それ、コンコルド効果に陥っています…。

「待った時間がもったいない…」という気持ちは分かりますが、私たちは過去に戻ることは出来ないので、待った時間はもう戻ってきません。どうしようもないです。つまり、この場合の待った時間というのはサンクコストです。そして、そのサンクコストに囚われて待つという行為を続けてしまうのは、コンコルドの事例と同じことをしています。

この場合、合理的な意思決定は待ち時間の長短に関わらず、すっぱりと待つのを止めて他のお店にいくことです。もちろん、待ったお店にどうしても食べたいものがあるとか、そのお店で食事をすることが目的なのであれば待つ方が良いと思います。

資格取得・勉強の例

続いては勉強や資格取得の例です。

皆さんが何かしらの勉強や資格取得をしようとしているとします。そのために、参考書を買い、スクールに入学し毎日時間を作って勉強をしていましたが、あるとき「これ、勉強してもあまり意味がないかもしれない…」と気付いてしまいました。さて、こんなとき皆さんならどういう意思決定をしますか?

ついつい、「使ったお金がもったいない…」「今まで毎日時間使ってきたし…」と考えて、勉強を続けてしまいませんか?それもコンコルド効果に嵌っています…。

既に使ってしまった参考書代やスクールの費用はサンクコストです。そして、毎日の勉強時間もサンクコストです。そこに囚われてしまうのは、やはりコンコルド効果に陥っています。こういう場合は一度今までのことは忘れて、冷静に続けるべきか止めるべきか考えるのが良いでしょう。

稼働していない設備を無理やり使う

最後はビジネスでの事例です。

けいなび工業は2台の設備を保有しています。1号機は古い設備ですが生産効率が良く、少ないランニングコストで生産が出来ます。一方の2号機は最近数千万円を掛けて導入した最新設備ですが、構造が複雑で1号機よりも多くのランニングコストが掛かってしまいます。そんな中、けいなび工業に設備1台分の製品の受注がありました。けいなび工業の社長は「折角2号機を買ったのだから、2号機で生産しなければ」と考えて受注した製品の生産を2号機で行おうとしています。さて、このけいなび工業の社長さんの意思決定は合理的でしょうか?

何となく、ここまでの話の流れで分かるかと思いますが、2号機を使おうとしている社長の判断はコンコルド効果に陥った判断です。確かに2号機には多額の設備投資を行っているかもしれませんが、2号機に支払ったお金は既にサンクコストになっています。ですので、この場合はランニングコストが少ない1号機を使うべきです。

こんなことを言うと、けいなび工業の社長さんは「2号機を使わないと投資が回収出来ない」と言うかもしれませんが、そんなことはありません。そもそも2号機の設備投資の回収は2号機を使って行わなければいけないということはありません。1号機を使って稼いだキャッシュで投資回収をしても良いのです。それに1号機は2号機よりもランニングコストが少ないので、その分だけ稼ぐことができ、早く投資の回収が出来ます。だとしたら、2号機のサンクコストに囚われて無理やり2号機を使うよりも、1号機を使った方が良いのです。

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過去のことは忘れて、未来志向の意思決定を

ここまでコンコルド効果・サンクコストの説明をしてきましたが、大切なことは「過去のことに囚われない」ということです。

私たちは多くのお金や労力・時間を費やすほど、それに囚われて「折角お金と労力を使ったのに」とか「今までの時間がもったいない」と考えてしまいがちですが、コンコルド効果に陥らないためには、過去のことは「もう、過ぎたことだからどうしようもない!」と思い切って忘れてしまって、その上で「これからどうするべきか?」と考えることが重要です。

経営学の本などには「サンクコストを意思決定に持ち込まない」と書いてあったりしますが、意思決定の際にはサンクコスト=過去のことは忘れて、未来のことに集中することが大切なのです。