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SCP理論 ~儲かる業界と儲からない業界の違い~

けいなび研修
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経済学の世界にSCP理論という理論があります。この理論、ひとことで言えば「儲かる業界と儲からない業界の違い」を説明する理論です。経営学の世界で有名な有名なマイケルポーターの競争戦略もこの理論をベースに作られています。今回はこのSCP理論について説明をしていきたいと思います。

S・C・Pって何?

では最初に、最初にSCP理論のS・C・Pがそれぞれ何を意味するのかを簡単に説明しておきたいと思います。

最初の「S」はStructure。産業の「構造」という意味です。
次の「C」はConduct。これは産業に属する企業の「行動」という意味です。
そして最後の「P」はPerform。これは企業の「業績」を表しています。

つまり、産業の「構造(Structure)」が企業の「行動(Conduct)」を決め、その行動によって企業の「業績(Perform)」が決まるよということをSCPという言葉は表しています。これだけだと何が何やら分からないかと思うのでもう少し詳しく説明していきます。

儲かる産業の構造と企業の行動・業績

皆さんは儲かる産業というのはどのような産業だと思いますか?成長している産業でしょうか?それとも、市場規模が大きな産業?

実は経済学的には「独占状態」の産業が一番儲かるとされています。それもそのはずです。独占状態というのは「うちの会社しかその商品を扱っていない」ということですから、価格が好き放題決められます。すると、合理的に考えれば企業はなるべく高い価格で商品を売ろうとする行動を取るはずです。そして、高い価格で商品が売れれば、当然儲かることになります。

つまり、産業が独占構造(Structure)であれば、企業は価格を高く設定することができ(Conduct)、結果として高い業績(Perform)を上げることが出来る。これが儲かる産業のSPCです。


儲からない産業の構造と企業の行動・業績

では、逆に「儲からない産業」はどのような産業でしょうか?

それは儲かる産業の逆です。つまり、「競争相手が多い産業」です。中でも最も儲からないのが経済学で言う「完全競争」の状態にある産業です。

「完全競争」とはどのような状態かというと①競争相手が無数にいて、どの企業も市場価格への影響力が無い。②参入障壁や撤退障壁が無い。③製品・サービスが差別化されておらず、どの企業が提供している製品・サービスも同じ。④経営資源が企業間を簡単に移動できる(移動コストがかからない)。⑤情報の非対称性が存在しない(皆が同じ情報を持っている)このような状態のことです。完全競争なる概念は経済学上の仮定なので、現実にはこれらの条件を完全に満たすような産業はありませんが、完全競争に近い産業はあります。

ではなぜ完全競争は儲からないのかを考えてみましょう。完全競争では多くの会社が同じようなものを販売しています。そのような状態で他社に勝つためにはどうすればいいでしょうか?

他社との違いは無いので、価格を下げるしかないですよね?「うちは他よりも安いからうちで買って下さい」とするわけです。でも、同じことは他社もやってきます。A社が価格を下げればそれを見たB社も同じことをしてきます。というか、それ以外にやりようがないのでそうする他ありません。

するとどうなるか?当然利幅はどんどん下がり業績は悪化します。ちなみに、経済学的には販売価格=限界費用となるところまで価格が下がるとされています。現実的にはその前に撤退すると思いますが…

つまり、産業構造が完全競争の構造(Structure)であれば、企業は価格を下げるという行動を取ることになり(Conduct)、結果的に業績が上がらない(Perform)ということになります。これが儲からない産業のSPCです。

成長産業だからと言って儲かるとは限らない

SCP理論に基づいて考えると、ある重要なことに気が付きます。それが「成長産業だからといって儲かるとは限らない」ということです。どういうことでしょうか?少し考えてみましょう。

成長産業は新規参入が多い

当然のことですが、成長産業は将来が有望(だと思われている)ので新規参入するプレイヤーが多いです。特に「設備投資が要らない」「技術やノウハウの習得に時間が掛からない」「許認可などの規制の影響を受けない」など参入コストが低い場合は、あらゆるプレイヤーが続々と参入してきます。そしてプレイヤーの数が増えてくるにつれて、その産業の構造は完全競争の条件の一つである「競争相手が無数にいる」を満たし始めます。

競争激化によって価格競争が始まる

競争相手が増えても、自社の商品が差別化されていれば良いですが、差別化されていない場合は大変です。完全競争の「製品・サービスが差別化されていない」という条件を満たしてしまうので、価格競争が始まります。そうなってしまうと、企業に儲けは残らなくなってしまいます。

このようなことが起こる可能性があるため、成長産業だからといって必ずしも儲かるとは限らないのです。

あなたの業界は独占型、完全競争型どちらに近い?

さて、ここまで簡単にSCP理論について説明をしてきましたが、世の中の産業は独占と完全競争の間に存在しています。そして、どの程度「独占に近いか?」「完全競争に近いか?」によって産業の収益性が決まり、独占状態に近ければ、いかにしてそのポジションを維持するか?完全競争に近ければ、いかにしてその状態を脱するか?が産業や企業にとって重要となってきます。これがSCP理論の主張です。

皆さんの業界や会社はどこに位置しているでしょうか?